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展望

科学的社会主義の展望  2022年1月~6月


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2018年1月~6月

●月刊「科学的社会主義」No.289 2022年5月号
    プーチンとロシア軍はただちに撤退せよ

                             社会主義協会事務局次長  津野公男

 攻撃強めるロシア軍
 ロシア軍の侵攻以来すでに一か月を超えた。
 ロシア軍の当初の戦略的目標がどこにあったのか、未だに定かではないが、キーウをも含むウクライナの主要部を抑え、ゼレンスキー政権を打倒し、傀儡政権を樹立しようとする目論見はほぼ破綻した。今見える限りでは、2014年侵攻によって実効支配下に置いているクリミヤと東部のドネツク、ルガンスク2州(いわゆるドンバス地方)の維持、ひょっとするとアゾフ海にかけられた橋によって繋かっているクリミヤ地域に陸上でつながる回廊を構築する意図も入れた東部・南部地域への戦闘に主力を注ごうとしているようである。
 ウクライナとロシアの交渉は数度開催され、クリミヤについては15年かけて解決していくことなどがウクライナ側から提案されているが、停戦までに占領地域を拡大・維持せんとするロシアが攻撃を強めている。5月9九日の「戦勝記念日」(ソ連がドイツに勝利した日)に勝利宣言をするため今後無差別攻撃が激化する可能性がある。

 戦争の惨状から目をそらせてはならない
 SNSの発達もあるが、戦争の悲惨さがヴィジュアルに、連日マスコミで報道される。私たちは、戦争とはこういう悲惨なものだという現実を直視しなければならない。攻撃する側には兵士も民間人も区別はない。日本による侵略戦争でも同じことが起こっている。今後の日本での、改憲反対や軍拡反対の闘いのためにも目をそむけてはなるまい。
 テレビ映像で見る限りでは、ウクライナの人々の「心を折る」ために病院や集合住宅が標的にされ、ファシスト・フランコ将軍の無差別攻撃を受けたゲルニカを想起させるような惨状があちらこちらの町で起こっている。おそらく、本当のことであろう(ロシアはフェイクだと言っている)が、ブチチャでは大量の市民が虐殺された可能性もある。
 他方、ウクライナへの攻撃を強めているロシア軍にも多数の死者が出ていて、ろくな訓練も受けず前線に投入された徴集兵(若い兵士)に多数の戦死者が出ているといわれる。すでにアフガン戦争での戦死者に近づいたといわれている。アフガン戦争では、子どもを殺された若い兵士の母たちは、激しく当時の政権を糾弾しそれがソ連の崩壊を招いた主要原因の一つに数えられている。厳しい言論統制のもとで、ロシアではいまは真実を語れないが、ロシアに民主主義を取り戻す大きなうねりを引き起こす可能性もある。

 どんな口実をもってしてもロシアの侵攻は正当化されない
 ロシアの侵攻は明白な国連憲章違反である。憲章第2条第3項では「すべての加盟国は、その国際紛争を平和手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない」、第4項では、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立にたいするものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」とある。
 この点で、難しい議論が介入する余地は全くない。海を渡って、朝鮮半島、中国大陸に侵攻したのは日本軍であった。国境を越えて他国の領土に入り、軍事施設だけでなく民間施設まで攻撃しているのはロシアなのである。要するに相手の領土のなかで武力行使をしているのだ。この点については、口シアにも言い分かあるとか、どれがフェイクかわからないという異論が介入する余地はない。もちろん、なにがフェイクであったかは、今後明らかになろう。
 また、経済制裁に関しては、いわゆる諸刃の剣、経済制裁を課すほうも返り血を浴びる、効果が出るのに時間がかかるとかの批判もある。しかし、国連憲章41条では「安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用をともなわないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ・・・」と、兵力使用を回避しつつ、圧力をかける手段として認められている。
 これとて、拒否権の行使によって安保理決議とはなっていないが、多くの国が制裁に加わり、これまでにない規模の制裁がおこなわれている。さらに、「民間人の大量虐殺」(ロシアは認めていない)があったことでさらに制裁項目の拡大が図らねようとしている。

 NATOの東方拡大
 「NATOの東方拡大は約束が違う」とのプーチンの主張には、たしかに言い分はある。
 ドイツが統一した際には、NATOは1インチたりとも東方に拡大しないとまで言っている(1990年2月 ベーカー米国務長官とゴルバチョフ会談)。また、当時はロシアのNATO理事会への参加さえ取りざだされている。それ以降も、英・独・仏などの欧州諸国はロシアを剌激しないよう、東方拡大には極めて慎重、抑制的であった。一方、アメリカは途中から積極的になっていく。とくにブッシュ政権、ネオコン支配の時期にはそれが顕著な傾向となっている。しかし、見落としてならないことは、ロシアに国境を接するポーランド、ハンガリー、チェコ、バルト3国等が強いロシアの復活を恐れ、加盟を急いだ側面である。これは必ずしも、これまでの冷戦思考の範囲内では考えられない、欧州諸国とロシアの間にある不幸な歴史が横たわっている。
 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、NATO加盟国でないフィンランドやスウェーデン、永世中立国であるスイスまでもが一斉に身構えることになった背景にも同じものがある。
 ツァリーのロシア、そしてスターリン時代のソ連の「独ソ秘密協定」に基づくポーランド分割やバルト3国の併介、あるいはソ・フィン戦争などをへて、ロシア(そしてソ連)に対する不信が強いのである。おそらく、島国で侵略したことはあるが侵略された経験のない日本の我々では想像できない思いがあるのであろう。

 ウクライナの「ナチ化」
 ウクライナもロシアと同様に、旧共産党支配時代の支配エリートが権力をたらいまわしにし、また権力と結びついた「政商」(オリガルヒー)とともにブロックを形成し寡頭支配が続いた。したがって、大統領が変わるたびに多額の汚職が問題となっていた。また、社会主義崩壊後の経済再建も順調には進まず、西欧志向とロシア回帰に揺れ動いてきた。社会主義崩壊後の、いわゆる「移行国家」に共通する傾向である。もちろん、社会主義に勝利したはずの資本主義もうまくいっている国はないのであるが・・・。
 そして、ロシアの侵攻に深く結びつく事件は2014年に起こったロシア寄りのヤヌコービッチ大統領政権が倒されたことである。EU加盟の決定を覆したこと、多額の汚職が発覚したことなどを背景に多数の国民が参加した「マイダン革命」である。その前の有名な「オレンジ革命」(2004年)もロシアの選挙干渉に抗議するものであった。
 ウクライナでナチ化が進んでいるとのロシアの口実は、「マイダン革命」に欧州の右翼が加わっていたこと、その後ウクライナ東部でもロシア系住民にたいするナチ的な勢力の攻撃があったという判断にもとづいている。たしかに、「マイダン革命」以降ウクライナには民族主義が強まり、反露機運が高まった。当時欧州右翼が一時的に活動したこともある。しかし、この間の経過をナチ勢力の陰謀であるかのように大げさに、あたかもそれが大勢を占めていたかのように言うのはフェイクである。
 そしてヤヌコービッチの追放を受けて、「ロシア人が迫害を受けている」との口実で、ロシアのクリミヤや東部2州への軍隊派遣がおこなわれることになった。もちろんこの軍事侵攻も、「国連憲章」違反である。

 ジェノサイドが原因なのか
 以降、東部2州は「ミンスク合意」によって小康が保たれてきた。ロシアへの不信の強まりによってアメリカの長距離ミサイル配備などが進められ、ますますプーチンをいらだたせることになった。またウクライナでも、ロシアとの交渉が進まないことから政権に対する弱腰批判も強まった。このような緊張した情勢の下で誕生したのがゼレンスキー大統領であった。彼は、汚職を繰り返してきた既成の政治家たちとは異なることが評価されたのであった。しかし、彼をもってしても対露交渉は進まず、国内ではやはり弱腰批判が強まり、NATOへの加盟を主張する声も強まってきた。ちなみに、NATOは紛争を抱えている国の加盟には慎重であり、現実性は薄かったのは誰にもわかっていた。
 今度の侵攻では、東部2州でナチによるジェノサイドが行われているという口実が準備された。国連の調査ではそのような事実はないとされている。ロシアの支配層によって捏造された完全なフェイクである。

 世界と結んで反戦・民主主義擁護の闘いを発展させよう
 侵略の当事国ロシアにおける1万5000人の拘束者を出しながらの抗議活動は未来に対する大きな救いだ。「後々まで侵略戦争を支持したとは言われたくない」という抗議活動を続ける女性の言葉は、侵略戦争を止めることのできなかった過去を持つ私たちにぐさりと突き剌さる言葉だ。
 自国の侵略戦争を阻止し、かつ軍備増強をも阻正しつつ、「戦争を企てる者を許さない」という国際的な反戦運動への参加、連帯強化が求められている。憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して・・・」の実践である。
 そして民主主義の擁護。民主主義のないところで戦争は準備される。かつての日本、今のロシアはまさにその見本だ。


●月刊「科学的社会主義」No.288 2022年4月号
    格差是正と貧困解消の勢力を大きく

                             社会主義協会事務局長  福田 実

  日本をはじめ世界には巨額の富がある。それを創り出したのは勤労者とその家族である。しかし、その富は一握りの大企業や富裕者に偏在している。格差是正と貧困層の解消のために、富を取り返し、全ての人々の幸せを担保する社会を実現する一里塚として今夏の参院選を闘う必要がある。

 1 世界の格差と貧困を見る
 2022年1月17日、国際NGOオックスファムは次のような報告をした。「世界トップ10人の富豪の総資産は、2020年3月時点と比べて2倍以上に急増した。一日当たり13億ドル(約1490億円)ずつ増えた」「(世界トップ10)の資産合計は2020年3月の7000億ドル(約80兆円)から、2021年11月には1兆5000億ドル(約172兆円)に膨らんだ」と。
 他方、貧困層の実態は、「(新型コロナで)世界の最貧困層の収入が減り、毎日2万1000人の死者が出るようになった」「一日当たり5.5ドル(約630円)以下で暮らしている人は、新型ウイルスのパンデミックがなかった場合より、新たに、1億6000万人多くなった(*絶対的貧困者は一日1.90ドル(約200円)で暮らす。2015年時点で約7.36億人―以下*印は筆者)」「特にマイノリティーや女性が影響を受けている」と憂いている。
 オックスファム・イギリスのダニー・スリスカンダラジャ最高責任者は「世界的な危機の中でも、私たちの不公平な経済システムは大富豪に極めて多額の収入をもたらしたが、最も貧しい人たちを守りはしなかった(中略)このシステムには大きな欠陥がある」と主張。「富裕層の資産に対する課税を増やし、皆保険制度や社会的保護への支出を増やすなどの取組みを政治家は進めるべきだ」と訴えた。(*なお、この税制に関しては昨年21年に同ダニー最高責任者は、「富裕税や法人税、全ての市民に対する社会保障の底上げなど《中略》公平さを取り戻すために抜本的な対策が必要」と強調している)。

 2 日本の格差と貧困を見る
 ここでは「富裕者」「勤労者」「貧困者」の実態を対比する。米国のフォーブス誌「日本の長者番付」(21年4月6日報道)によると日本の資産家の一位は孫正義氏(ソフトバンク)で4兆9500億円、以下10位までの平均資産額は1兆7090億円。日本の役員報酬の一位はM・デビント氏(セブン&アイHLD取締)で、27億5500万円。以下10位までの平均報酬は14億8670万円(東洋経済、21年9月9日)。「配当を含む経営者の収入」で、1位は孫正義氏で195億7200万円(配当収入193億3300万円、役員報酬2億900万円)、以下10位までの平均収入は48億4500万円にもなる(東洋経済20年9月23日)。私たち庶民にとっては「夢のまた夢」という金額である。
 そこで「配当を含む経営者の収入」を国税庁「令和2年分民間給与実態調査結果」を参考に民間給与と比較する。
 一年を通じて勤務した民間企業の給与所得者5245万人(正社員、非正社員、役員)の平均給与は433万円(男531万、女293万)。正規平均給与は496万円(男550〇万、女384万)、非正規は176万円(男228万、女153万)。(なお、個人事業所の平均収入は250万円、男306万、女223万円)。上位10人の一年間の平均収入48億4500万円は、正規労働者の977年分、非正規の2753年分とほぼ同額。特に、最も低い非正規女性153万円と比較すれば3167年分にもなる。
 加えて貧困層の状況を幾つか示すと、まず相対的貧困率の中央値は低くなっている。富有層を除く99%、全体が収入減なのである。2015年の中央値は245万円で、貧困線は122万円余(月額約10万円)。日本の相対的貧困率(以下、貧困率)は15.6%で6.4人に1人もいる。特に顕著なのは一人親世帯での貧困率は50.8%。「生活が苦しい」と答えた人は全体で56.5%だが母子世帯では82.7%である。さらに65歳以上の単身世帯の貧困率は、男性36.4%、女性56.2%と高い。これが「経済大国」日本の実態である。
 途方もない巨額の資産・報酬・収入は一人でできるものでない。多数の勤労者からの搾取の上に成り立つ。だから、勤労者と支える家族は富を奪い返す権利がある。
 オックスファム報告書は「世界の格差」を「経済的な暴力」と呼んだが、これが新自由主義経済の本質と言える。

 3 格差是正と貧困層の解消のための「社会保障」を
 格差是正と貧困層解消の方法は色々ある。その一つが税制であり、他にも最低賃金の大幅な引上げなど賃上げ、同一労働同一賃金の実現、社会保障の充実等が考えられる。はじめに社会保障の充実を考えてみたい。21年衆院選での各党の公約一・策集を見てみる。最初に基本的な考え方を、以前本誌で紹介した。
 社会保障充実の基本的考え方は「出るを量って、入りを制す原則」との財政理念である。特に、コロナ禍で表面化した様々な生活困難者への健康的で文化的な生活の保障が必要で、これらの人々に手を差し伸べる社会保障の確立が急務である。具体的には、年金・失業保険・休業補償・生活保護等の抜本的改善、無償・低廉な医療・教育・保育・介護・住宅等の提供である。こうした必要な支出を踏まえて歳入(特に税制)を考える必要がある。
 宇都宮健児弁護士も言う。「(税制や財政は)全ての人に人間らしい生活を保障するためにどれだけの税収が必要か、どのような税制が必要かを考えること」と。

 4 各党の社会保障の政策を見る
 21年衆院選の各党の公約・政策集から大雑把に紹介する。
 国民の関心の高い「社会保障」「生活保障」に関しては、ほとんどの政党がその充実策をあげているが、自民・公明は政権与党なので現状是認が強い。「子どものいる世帯」や「非課税世帯」への「給付金」を行ったが、他で目ぼしいのは公明党の「生活困窮者への住宅手当」「出産育児一時金10万円」程度である。立憲野党(ここでは国民民主も入れておく)は、「給付金」以外にも、「教育の無償化」「児童手当の拡充」「家賃補助」「BI(含BIサービス)の導入」等々が並ぶ。立憲野党ではないが維新も「教育の無償化」「ベーシックインカム」を言う。

 5 社会保障など生活を支える財源(税制)の各党の政策
 問題はその財源である。そのためには「富の偏在」をただす必要がある。その中心は「税制」であり、その原則の「応能負担」強化である。共産党宣言で言えば「強度の累進税」である。宇都宮健児弁護士の言を引けば「財源の裏付けのない公約は信用するな」である。
 自公は「現状維持の姿勢」が強いだけでなく「格差を拡大」してきた。それは税制の推移(2021年現在と1988年を比較)を見れば一目瞭然である。法人所得税は、△18.8%の大幅な減税である。法人税実効税率(所得税と地方税)は、△21.81%。これらに加えて、「租税特別措置」と「政策減税」で大企業の税負担を10%程度にしている。この結果が484兆円の内部留保につながる。
 個人所得税の最高税率は、△15%。住民税の最高税率は△6%。相続税の最高税率は、△15%である。ちなみに岸田首相が棚上げした金融所得税(株式売却益・配当収入等)は分離課税で20%(所得税十住民税)と低率で、もし総合課税であれば富有層は55%になる。
 新社会党をはじめ立憲野党は、濃淡はあるが真面目にきちんと「応能負担原則」で社会保障、生活保障を打ち出している。例えば、岸田首相が棚上げした「富裕層への金融所得課税への強化」「大企業、富裕層への課税強化」「内部留保課税」等が並ぶ。特徴的なのは新社会・共産・れいわが「タックスヘイブン(租税回避地)規制」にも触れていること。また、新社、社民は課税(社会保障に関しても)に対して「世帯単位から個人単位を基本とする(人格の独立と個人の権利を確立)ことに触れていることである。
 国民民主は大企業への課税強化の政策は無いようである。ただ「持続可能な年金制度の設計の推計として「法人税、金融課税、富裕層課税を含め、財政の持続可能性を高めます」とあるのみで、年金財政に限定し、腰が引けている。
 維新はどうか。立憲野党とは真逆の「所得税・法人税の減税」を主張している。また「金融所得課税の総合課税化」の言及はあるが、それは単一課税・低率を前提としているように受け止められる。維新の税制は「大減税による民間経済活性化」である、それは大企業・富裕者への減税と結びつく。目立つのは、歳出減を強調し、その中に「議員歳費と定数の3割削減」「国・地方公務員の人員・人件費の削減」の主張である。総じて自公政権の右翼にいる新自由主義「税制」の追求と言える。

 6 結語
 今夏には参院選がある。新社会党は参院比例で社民党が呼びかけた「統一名簿」の要請に応えることにした(22年2月27日全国大会)。予定候補の岡崎彩子さんは「ロスジェネ」(就職氷河期世代)であり、「格差世代」である。正社員として就職できず、アルバイト、派遣社員、契約社員を強いられた世代である。こうした人々の多くは、雇用が不安定で、賃金も低く、コロナ禍で職を失った。非正規労働者が2000万人超、ワーキングプア(年収200万円未満)が約2000万人弱の中で、その世代を擁立し、自公政権・維新と主体的に闘うことになる。
     (ふくだ みのる)


●月刊「科学的社会主義」No.287 2022年3月号
    人を縛らない職場
                              社会主義協会理論部長  野崎佳伸

  「好きな日の好きな時間に出退社し、嫌いな仕事はやらなくていい」。こんな会社が大阪府茨木市にある。その名も「パプアニューギニア海産」。実はこれまでに何度もメディアで紹介されていたらしいのだが、不覚にも昨年12月までその存在を知らなかった。以下、代表取締役社長の武藤北斗さん(1975年生まれ)のSNS「ノート」投稿記事から紹介しよう(一部省略)。
 「まず、現在のフリースケジュールの状況を箇条書きで端的にご紹介します(2021年12月17日現在)。①パート従業員24名全員に適用。②勤務可能日、時間は平日(月~金)8時40分~17時30分。③好きな日に出勤、欠勤。④一分単位で好きな時間に出勤可能。⑤30分単位で好きな時間に退勤可能。⑥出勤退勤に関する全ての連絡禁止、理由
説明禁止。⑦休憩は5分刻みで好きな時間に好きなだけ可能。⑧一日・週の勤務時間の定めはない(ただし月に20時間以上は勤務)。⑨社会保険加入者は週に30時間以上勤務(現在4名)」。
 この会社ではこの勤務形態(フリースケジュールと自称)を2013年から模索し始め、現在では今のスタイルに落ち着いたという。2011年まで彼の父君が創業した会社は宮城県石巻市にあったが、東日本大震災による津波で全壊し、それを機に茨木市に移転した。主として南太平洋のパプアニューギニアから輸入した天然エビを、工場でむきエビやエビフライ用に加工して販売する会社である。武藤さんの試行錯誤は概略、次の通り。

2013年 工場長に就任。6月、従業員と面談を開始
同年7月 フリースケジュールスタート 当初は出勤する曜日が自由なだけで、出勤日数に定めがあり、勤務時間は固定されており、9時~4時、10時~5時など面接時に決めたものをそれぞれに適用。しかし数か月後には出勤日数の定めをなくし、いつでも好きな日に出勤欠勤可能とする(勤務時間は固定のまま)。
同年8月 帰る時間を選べるように まずは退勤時間を16時、16時30分、17時の中から毎日好きに選べることからスタート。
同年9月 出勤時間も自由に 退勤時間だけでなく出勤時間も30分刻みで自由に。
2017年7月 休憩を15分刻みで自由に。
2019年3月 出勤1分刻みで自由に。
2020年6月 休憩時間5刻みで自由に。
2021年1月 月の出勤時間数の定めを作成
 数力月出勤しない従業員が複数出たため、月に20時間以上出勤と定める。

 「フリースケジュール」ではあっても、週単位や月単位にならしてみれば、大体の生産量のメドは立つようだ。というのも、パートという働き方は、働いた時間に対して給料が払われるので、休みっぱなしでは収入を得ることができないから。個々に「これくらいは稼ぎたい」という目安があるため、都合が悪くて休む日があれば、代わりにほかの日に出勤するなどし、全体でみれば労働量が極端に増減することがないらしいのだ。
 この会社のもう一つの大きな特徴は「嫌いな作業はやらない」というルールだ。いや「やってはいけない」のだそうだ。40項目近い作業についての、各人の好き嫌い一覧は全員に周知される。またパート長は廃止し、時給は一律で全員同じ(千円)だ。
 武藤さんの「人を縛らない職場」の自己評価は次の通り(出典『生きる職場』イースト・プレス 武藤北斗著 2017年。評価は当時のもの)。

[離職率の低下] まず人が辞めなくなりました。人が辞めないので求人広告を出す費用もかからなくなり、さらに、面接などの採用にかかわる仕事に時間を取られるようなこともなくなりました。
[商品品質の向上] 人がよく辞めていたかつての工場では辞めた従業員の穴を埋めるために、新人のパートさんが常に1人か2人いるような状態でした。当然ながら新人を育てていく必要が出てきますので、結果として熟練したパート従業員がその役目を負うことになります。人が辞めなくなったことで、商品の品質が大きく向上しました。
[生産効率の上昇] 熟練したパート従業員が長く職場に定着したことで、一人一人の動きに無駄がなくなり、またグループや派閥がなくなり、職場のチームワークがよくなったことが要因だと考えています。
[人件費減少] 導入前と比較してパート従業員の数は減少しています。人件費は毎年少しずつ減っていき、約40%の人件費が削減されました。働き方を変えたことによる効果が、数字としてもっとも表れている項目でもあります。
[従業員の意識変革] そしてなにより実際に働くパート従業員の意識が大きく変わり、それが全てのプラスの循環を生み出しています。こうした好循環が生まれたことで、職場の雰囲気は以前と比べて飛躍的によくなりましたので、効率や品質が上がるのは当然のことです。

 この会社は本年1月、「社会保険を抜けた従業員が出たため」40歳未満の条件を付して2名のパート従業員を募集した。その募集案内によると、この時点でパート従業員は22名。社員は4名に増えている。一日の出勤人数は平均して15名ほどらしい。そして今回の応募者から、勤務日数を月40時間以上で統一する予定、とある。案内には「フリースケジュールという言葉が一人歩きし、自由気ままな会社というイメージが強いですが、実際は仕事にはとても厳しく、出勤した際は常に自分の最高のパフォーマンスを求められます。結構ハードです。『嫌いな仕事をしてはいけない』というルールがありますが、それ以外の作業は全てやります。『好きな事だけをする』わけではありません。苦痛を取り除くのが目的であり、好きを仕事に!みたいな感覚は一切ありません」「工場長の武藤北斗はメディアやSNSだけみると優しく感じるかもしれませんが、いい人と勘違いして応募しないようご注意ください」とある。
 この会社の「フリースケジュール」を可能にしたのは、冷凍食品の加工という業態が大きく寄与していると思われる。その日の出勤者数に応じた冷凍エビの分量を解凍して加工し、再度冷凍し出荷するのである。だが、この会社の特徴はその点にだけあるのではなく、「離職率を低くした」ということにこそ注目すべきである。従業員の「働きやすさ」に着目し、工夫を重ねることは、どの業界でもできるはずだ。そしてこのような工夫は労働者協同組合でこそ取り組みやすいのではないだろうか。

    
 話は飛躍するようだが、振り返ってソ連型社会主義圏での働き方はどうだったか。
 ハリー・ブレイヴァマンの『労働と独占資本』(岩波書店、原著1974年)は現代の資本主義を「構想と実行の分離」の観点から鋭く告発する名著だが、実はその序論ではソ連における労働過程について(遅れたロシア資本主義の生産力を継承することからスタートせざるを得なかったことを踏まえつつも)厳しい指摘をしていた。
 「発展した資本主義の科学技術・生産体系・組織化され秩序だった労働過程にたいするマルクス主義者たちの関心と、賞賛さえもが、むしろ高められることになった」「実際、ソビエトの工業化は資本主義のモデルを見習った。・・・ソビエト連邦は、細部においてだけ資本主義国のそれと区別されるにすぎない労働組織のうえに腰を落ち着けてしまった。したがってソビエトの労働人口は、西側の労働者階級に刻印されたすべての汚辱のしるしを身につけている。この過程で、そのイデオロギー的影響を世界中のマルクス主義者が被った。マルクスが慎重な条件付きで取り扱った資本主義の技術と、彼が激しい敵意を燃やして取り扱った労働の組織と管理とが、相対的に容認されるようになった」「私見によれば、ソビエト連邦の労働組織(その特性はソビエト圏諸国全体にみられるし、ある程度は、資本主義的所有関係が転覆されたすべての国にもみられる)は、資本主義諸国の労働組織とほとんど異なるところがない」。
 マルクスは「国際労働者協会創立宣言」のなかで協同組合工場について次のように称賛した。
 「生産は「働き手」の階級を雇う主人の階級がいなくてもやっていけるということ・・・賃労働は・・・自発的な手と健全な精神、そしてまたよろこびにみちた心臓とで勤労にいそしむ結合労働に席をゆずって消滅すべき運命にあるということ・・・」。
 パプアニューギニア海産がそうだと言いたいわけでは勿論ない。しかし学ぶべきものはないか。以前にも書いたように「社会主義にならなければ何も解決しない」「社会主義になれば自ずと解決する」という二つの思考停止は我々の取るべき態度ではない。
     (のざき よしのぶ)


●月刊「科学的社会主義」No.286 2022年2月号
    改憲と軍拡を阻止する野党選挙協力

                             社会主義協会事務局次長  津野公男

 改憲と軍拡に突き進む自公政権
 先の衆議院選挙では自民党が単独で過半数を維持し、維新が急伸し、自公に維新を加えた改憲を急ぐ勢力が優に議席の2/3を超えることになった。
 自民党の主要な選挙公約は①新しい資本主義、②改憲、③安保・防衛力の強化であった。新しい資本主義、分厚い中間層を再構築するという政策は、池田・宮沢首相を出した宏池会出身らしく、安倍・菅と続いた強権主義、露骨な新自由主義とは異なった色合いを出すことを意識した苦心の政策ではあった。しかしいまだに基本構想は示されないし、再配分重視の政策もいつのまにか成長を前提とするということになってしまっている。もっともアメリカのバイデン大統領も身内の反乱もあり政策遂行に手間取っていて支持者の失望を買い、支持率も下がる危機にあるが、岸田内閣の場合ははじめから腰が引けている。残るのは安倍・菅政権が進めてきた改憲と防衛力強化政策の踏襲・強化の側面でしかない。
 もっとも改憲に急進的な党は維新だ。周知のように年末に開催された衆院憲法審査会で、次の参院選の際に国民投票を行うよう岸田総裁に注文している。さらに、国民民主党の態度も微妙に揺れている。『日経新聞』では、「今年は『改憲元年』とも言える]「憲法論議の加速にいちばん前向きなのが、日本維新の会と国民民主党だ」と憲法審査会の議論が加速すると見ている(『日経』1月8日)。政権党である自民党だけが改憲の音頭をとるのでなく、他の党にせかされる形をとって改憲を進める、絶好の布陣である。
 またこれまでになく軍事力増強政策が前面に出てきた。米中対立の激化と日本の日米同盟重視、「開かれたインド太平洋構想」の共同推進、台湾重視政策による南西諸島への自衛隊の重点配備(南西諸島の要塞化)と着々と中国を意識した軍事政策が進められている。マスコミも、中国に対抗するといわれれば批判の矛先が鈍る。中国がいま台湾攻撃に踏み切る現実性は乏しい。それは米中日政府ともに暗黙の了解事項である。しかし軍事力増強競争は過去から魔性のような性質を持っていて、常に相手の攻撃を凌ぐことのできる軍事能力、相手を超える攻撃力の保持競争が繰り広げられる。それに加えて国民の目を外に転じさせることで、支配エリートは国民の政権批判をかわしやすくなる。現に世界の軍事費は前年比2.6%と大きく増額されている。
 いま自民党は一年かけて日本の防衛体制を抜本的に見直し、敵基地攻撃能力や防衛費GDP比2%めざす、「防衛大綱」や「中期防」も大きく見直すと言っている。防衛費GDP2%は自民党の選挙公約でもある。[敵基地攻撃能力]に関する議論は「専守防衛」になじまないと、これまで半ばタブーとされてきたものであるが、危機を煽り立てることでそれを容認する世論、マスコミの報道が広がっているとみて、ここで公然化しようというものである。また防衛費のGDP2%の議論に至ってはとても正気で言っているとは思われないものである。当初予算の2倍化だけで11兆円弱、一気にインドを引き離して米中に次ぐ世界第3位の軍事大国になってしまう。日本の防衛費はすでに年末の補正予算では7000億円、当初予算と合算すれば6兆円となっている。そして12月に閣議決定された防衛予算では5兆4000億円規模となっていて10年連続の増加である。
 防衛費増額や敵基地攻撃論については、元安倍首相が前面に出て議論をリードしている。高石政調会長も安倍チルドレンの一人であり、改憲と軍拡では強硬派であり、自民党のなかの議論はますます危険性を帯びてくると思われる。
 改憲と軍拡はこれまでにない勢いで進められる可能性がある。しっかりと備えよう。

 野党の選挙協力は成果を上げている
 今夏に参議院選挙を控えて立憲野党の選挙協力に消極的な意見が出ている。とくに、共産党との選挙協力が立憲民主の政策を埋没させ、比例区の議席で大幅な減少をもたらしたといわれ、枝野執行部の引責辞任となった。また連合の芳村会長は、共産党との選挙協力には組合員のなかに批判が強いと否定的だ。
 『世界』1月号では。中野晃一氏と菅原琢氏が衆議院選挙結果を分析しているが、これらの消極論とは見解が全く異なる。菅原氏は「旧希望の党の議員などが立憲に合流しており、公示前議席を選挙とは無関係に大きく膨らませていた。したがって、同党の議席減は同党への支持の急落を意味するものではない」「立憲民主党は有権者の支持を失っだのではなく、もともとあまり支持されていなかったのである(だから比例区では議席を減らしている)」「公示前の数字との比較が混乱を生じさせるのは自民党も同様である。自民党の前回選挙結果は284議席だったが、公示前には不祥事などで7人減っている。したがって、前回結果と比べると23議席減らしている」。さらに小選挙区の選挙協力では「共産党候補が撤退したことで野党候補の勝利に貢献している」「共産党候補の撤退は野党最上位候補の得票率を平均的に7.9ポイント押し上げている」(以上骨子)。また中野氏は2012年体制下ではメディアまでもが「権力に監視される番犬」はたまた「権力のために監視する番犬」になり下がった、そして一ヵ月ほど自民党のプロパガンダ機関であるかのように自民党総裁選によるメディアージヤックに加担したと別の側面からも分析している。
 衆議院で改憲発議可能な2/3議席を改憲派に抑えられたいま、3年前の善戦でかろうじて改憲発議を食い止める1/3議席を維持している参議院。今夏の参議院選挙は負けられない闘いである。

 維新の躍進をどう評価するか
 先の中野氏は「はっきりしているのは・・・、今回維新の『躍進』と喧伝されている現象も、17年選挙で小池劇場と希望の党騒ぎに埋没して大きく減らした得票数を取り戻したというべきでこの勢いが今後も続いていくと見込む根拠はない」、菅原氏は「立憲民主党と国民民主党は結局希望の党に投票した有権者をつなぎとめることができなかった」「おそらく希望の党の投票層の比較的多くは今回比例区で維新の会に移ったと考えられる」と分析している。中野氏は維新の会について「むろん大阪圈の現職与党としての優位性は侮れず、またネオリベ右派イデオロギーを共有するメディアとの親和性は深刻というほかないが、実際には非自民ネリベ右派勢力としての伸びしろはこの辺で尽きている可能性はある」との分析だ。
 大きな観点という点では両氏の分析に違和感はないものの、吉村知事が毎日テレビに出演し、実にくだらないことを繰り返す。最近では橋下徹までがレギュラーコメンテーターとして出演する、チャンネルを切り替えれば商売上手の吉本の「お笑いタレント」だ。徹底的に堕落した関西マスコミ、これが大阪圈の実情である。

 維新はもっとも急進的な改憲と新自由主義の党
 奈良女子大学の中山徹教授は、維新の「支持層」としては①新自由主義的施策の支持層(いわゆる勝ち組、維新の進める政策が新自由主義的施策であることを理解し、賛同している層)、②将来に対する不安を増大させているが、何か原因でそのようになっているかがはっきり分かっていない層(・・・議員歳費の削減などの身を切る改革、100万円は分かり易いが100億円は分かりにくい)、③維新が進める現金給付に魅力を感じている層(破壊しつつ、一方では給付も進めている。これが自公との違いで「改革」政党というイメージをつくっている)と分析している。なお「自公批判に終始するとだめ、自公とともに維新も批判をしなければならない」ともいっている。(2021年12月に行われたアイ女性会議兵庫主催講演会のパワーポイントを引用させていただいた)
 また富田宏治関西学院大学教授は、「維新の会」の支持層については橋本徹氏が自ら語った「ふわっとした民意」というイメージや、ある種の都市伝説と化した「格差に喘ぐ若年貧困層の支持という幻想がいまだに払拭されていないように思います・・・。格差に喘ぐ若年貧困層などでは決してなく、税や社会保険などの公的負担への負担感を重く感じつつ、それに見合う公的サービスの恩恵を受けられない不満と、自分たちとは逆に公的負担を負うことなくもっぱら福祉、医療などの公的サービスの恩恵を受けている『貧乏人』や『年寄』や『病人』への激しい怨嗟や憎悪に身を焦がす『勝ち組』、中堅サラリーマン層の姿にほかなりません。また、それはトランプ大統領を支持する白人労働者層が、黒人やヒスパニック。さらに移民に抱いている排除と排斥の感情とも共通するものです]と述べている。中山教授とほぼ同じような見解である。

 維新との闘い、あるいは団結をとりもどすために
 維新の支持層の核心的部分(①)は当面相手にする必要はない。他の不満は持っていながらも、私たちが支持層として組織できていない層(②③)をいかにして運動に組み込んでいくのかが長期的な課題である。
 新自由主義は格差と貧困を生み出しただけではない。闘う組織と団結を壊した。自己責任(自助偏重)思想を押し付け、人間的絆を断ち切り、互いにぎすぎすし、心を荒ませ、バラバラの個を生み出した。長期にわたる攻撃の結果失われた団結(連帯)を取り戻すには当事者たちが受け身ではなく、自ら活動し、闘うことによってしか達成できない。労働運動、社会保障や福祉分野、あるいは地域コミュニティーの再建を進める運動等、下からの草の根的な運動づくりを強化すること。そういう労働者、勤労国民が増えていくこと、これが維新。あるいは維新的なもの、ようするに右派ポピュリスムと闘う道ではあるまいか。
     (つのきみお)


●月刊「科学的社会主義」No.285 2022年1月号
    最賃闘争に弾みをつけるノーベル賞
                             社会主義協会代表   河村洋二

 2021年のノーベル経済学賞に「最低賃金」の研究で成果をあげたカリフォルニア大学のデビツド・カード教授等米学者3人が選ばれました。「最低賃金の上昇が雇用の減少につながらないことを明らかにし、最低賃金を上げると経営者が雇用を減らすとの見方を覆した」(共同通信21年10月12日)ことが評価されたとのことです。カード教授等の研究によると、「最低賃金を上げると雇用の減少につながるとか失業率が上がるといった従来の労働経済学上の常識は必ずしも正しくないこと。最低賃金の引き上げと雇用の減少の間に因果関係がないこと」が実証されたということでした。
 「最低賃金を引き上げれば、雇用危機を招く。新期採用も控えざるを得ない。それでもいいのですか」は、私たち労働側の最低賃金引き上げ要求に対する経営側反論の常套句であり、公益委員も否定してきませんでした。しかし、今回のカード教授等の研究(自然研究、実証実験)成果は、それが正しくなかったことを立証しました。そして、ノーベル賞がこれにおすみつきを与えました。

 春闘の柱に最低賃金引き上げ闘争を
 一昨年、中央最低賃金審議会は、「2025年までに最賃1000円を実現する」とする政府公約にもかかわらず、またすべてのナショナルセンターの反対にもかかわらず、これを無視し、最低賃金を引き上げる目安額(最賃目安額)を見送り大問題になりました。理由はコロナ不況だからということでしたが、コロナが猛威を振るっていた欧米でもアメリカ(436円引き上げ1635円)に、ドイツ(125円引き上げ1397円)に、フランス(36円引き上げ1324円)に、イギリス(29円引き上げ1363円)に大幅な最低賃金の引き上げが行われていました。これに比して日本のあまりにも甘い生活困難者の実態把握や低い最低賃金(全国単純平均844円、加重平均902円)、そして全国を4ランクに分けるランク制の矛盾が、大きな問題として浮き彫りになったからです。コロナ禍で最低賃金では生活できないパートやアルバイトなどが続出し、さらにパート、派遣、アルバイト切りが横行、コロナ解雇者11万人はもとより、生活困難者、生活保護申請者はピークに達していました。
 最賃闘争は、最低賃金レベルにある労働者(6%、400万人)だけでなく新規採用者や生活保護者、年金生活者、地域経済にも波及します。最賃引き上げの熱は今も続いており「最低賃金今すぐ1000円、目指せ15001円」の実現に向けて全力を上げ、たたかいを強めていかねばなりません。
 非正規春闘を提唱している労働運動研究フォーラム(伊藤彰信事務局長・元全港湾委員長)は、一昨年から春闘の柱に最賃闘争を据え、春闘再構築をアピールしています。「いまや就業労働者の40%2000万人を超えたといわれる非正規労働者の低賃金構造を打ち破らなければ賃上げも春闘勝利もない。したがって格差と貧困の拡大にストップもかけられない。組織拡大も進まない」と。まさにそのとおりです。
 しかし、連合は生産性三原則(雇用確保、労使協力、公平な分配)に固執し、21春闘では賃上げより賃金水準の維持などと春闘を放棄。その結果は、賃上げどころか定期昇給も確保できない5233円(1.79%)に終わりました。
 ここ25年、先進国で唯一日本の賃金だけが下がり続けています。低賃金で働く未組織の非正規労働者の拡大に要因があることは間違いありません。そのことが賃金相場を押し下げ賃金交渉を困難にしているのです。この問題の解決を図るには最低賃金の大幅引き上けが必要です。そのためには労働組合(正規労働者中心)が最賃闘争に立ち上がり、正規労働者と非正規労働者の団結と連帯を強め、非正規労働者の組合員化、組織化を進めることです。最低賃金の大幅引き上げを22春闘をたたかう労働者、労働組合の柱にしなければなりません。連合や全労連、全労協にも働きかけ、オール労働団体で最賃闘争を大きく盛り上げたいものです。

 私の22年春闘方針
 そこで私の22年春闘方針を紹介します。中身はいうまでもなく最賃闘争(非正規春闘)の強化です。
 私の春闘の第一の課題は「22最賃闘争キックオフ集会 in 高知」の開催です。2月初旬に開催できればと思っています。「最賃1500円実現・JAL解雇撤回四国キャラバン実行委員会」の主催で労働運動研究フォーラムや「最低賃金の大幅引き上げキャンペーン委員会」などの協力を得て高知開催(調整申)を願っています。その理由は、昨年(2021年)の最賃改定でDランクの高知が全国最低の820円とされたので、怒りの「820円全国最低最賃脱脚宣言」(仮称)を発し、全国最低最賃を高知から返上するとともにマスコミにアピールして県内はもちろん全国の22最賃闘争に弾みをつけるためです。高知労働局への申し入れ(①最賃1500円実現、②ランク制廃止、全国一律最賃制実現、③JAL闘争の早期解決)や連合高知、県労連高知、全労協高知)への激励要請行動などを行いたいと思っています。
 第二の課題は、県春闘講座実行委員会で8年前から続けている「22春闘講座」(2月末)の開催です。昨年は「コロナ感染症と労働者・労働組合」(講師・宇野克己全港湾神戸支部書記長)をテーマに県内3会場(150名参加)で開催しました。今年は「最低賃金闘争とは何か、その意義と課題」(講師・未定)で行いたいと思っています。目的は総評が始めた春闘の歴史や目的を語り伝えるためです。連合はその発足(1989年)当初から春闘を「春季生活改善闘争」という言い方で、いわゆる闘う春闘イメージを変えようとしてきました。マーケット・バスケット方式(生活実態・労働実態)からの賃金要求でなく、生産性基準原理だとか経済整合性とか経済指標を駆使し、結局生産性の枠内の賃金要求にとどめ搾取の実態やストライキから労働者を遠避け、資本と労働の対立を覆い隠してきました。当然春闘は敗北が続きました。
 残念なのは私たちの中にも高齢化、退職を理由に春闘無関心が増えていることです。今日でも労働者の最大関心事は賃金です。退職しても高齢者でも春闘にしっかりかかわることが、現役との共通認識を持ち続けることになり大切だと思います。現役労働者と一緒にたたかうチャンスを春闘や学習会、原発、環境問題で広げることが私たちの未来をつくります。非正規春闘、最賃闘争は現役労働者と人間関係を深めねばならない私たちにとって絶好のチャンスではないでしようか。
 第三の課題は「最賃1500円実現四国キャラバン」を成功させることです。私たちは三年前の「労働法制改悪反対全国キャラバン」の一環として同「四国キャラバン」に取り組みました。その時は厚労省の裁量労働制に関する調査資料の不正不備があり「みなし労働の改悪反対」の世論が高まり「みなし労働の拡大」に歯止めをかけることができました。その経験から「四国キャラバンを定着させることができれば運動の活性化につながる」と考えていました。そんな折、「労運研」から非正規春闘を盛り上げるための最賃全国キャラバンの提起があり「最賃1500円実現・JAL解雇撤回四国キャラバン」に取り組んだのです。
 最賃四国キャラバンでは①4泊5日で四国各県を回りながら、②四国各県労働局への申し入れと交渉(主な要請項目は、最賃1500円引き上げ、最賃4ランク制の廃止と全国一律最賃制の実現、最賃引き上げに伴う経営圧迫について中小零細企業への税・社会保障の減免など支援措置の実施、など)。③最賃の大幅引き上げとJAL解雇撤回闘争の早期解決キャンペーン行動、④最低賃金の問題点の学習・交流、⑤非正規労働者・会計年度任用職員との交流・討論、を行ってきました。今年度はさらに⑤連合などナショナルセンターへの激励、要請行動、⑥自民党最賃議員連盟メンバーや参議院議員候補への要請行動などを加え、マスコミ対策も含め最賃の大幅引き上げムードをより一層高めていきたいと考えています。

 最賃闘争の意義i全労働者の賃金を底上げ
 日本の労働者の賃金はここ25年下がり続けています。なぜ賃金が上がらないのか。大企業労働者の賃金が上がったとしても低賃金の非正規労働者が拡大し平均賃金が下かっているからです。労使協調を旨とするナショナルセンターが大リストラ、グローバル資本主義(新自由主義)を前に産別自決と称して機能せず、「雇用か賃上げか」を迫られた既存の労働組合は「雇用を選択」しました。その結果、賃金より雇用となり、雇用を守るためには、つまり正規労働者の雇用不安をなくすためには、賃上げを我慢するしかないということで、自ら賃金交渉力を低下させてしまったのです。
 国税庁の「民間給与実態統計調査」(2020年)では、年間平均給与が2年連続減少し、433万円(1997年470万円)、正規労働者496万円に対し非正規労働者は176万円です。「賃金構造基本統計調査」(2020年厚労省)によれば、一般労働者の月収平均は30万7700円(男性34万円、女性25万円)、短時間労働者(非正規)の時給は1412円です。短時間労働者がフルタイムで20日働いたと仮定しても月収は22万5960円です。このままではこの格差は拡大しこそすれ解消されることはありません。
 最低賃金は正規労働者にとっても重要な問題です。すでに最低賃金が高卒初任給を上回るケースが生まれていますし、最低賃金引き上げの影響率は全労働者の6%400万人に達し、最低賃金付近に張り付けられている労働者への影響も考えるとその数は1000万にも達します。ここに最低賃金闘争の大きな意義があります。
 「8時間働けば暮らせる社会」、「仕事を求めれば与えられる社会」、「病気になれば安心して休める社会」にしなければなりません。今年こそは、餓死する子どもや、外国人実習生を犬や猫のように働かせたうえに残業代をごまかしたなどという非人間的なニュースのない年にしたいものです。




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