1.医療、介護、福祉の包括的ケアシステムが崩壊寸前
開業医が高齢化し70歳ころにはクリニックを閉院、地域の医師会会員が年々減少し学校医・産業医の受け手が不足し始めている。日曜・休日診療所の閉鎖が始まっている。地域の中核病院(市立病院)の医師高齢化と、退職のあと補充が利かず、心筋梗塞・脳卒中などを治療する医師が不足し、一分一秒を争う救命患者を30分以上の遠隔病院まで搬送させ、途中で絶命に至るケースが増えている。お産を診る産科医の高齢化で閉院が続いており、このままでは地元でお産が出来なくなる不安とともに親元での里帰りお産が断られ始めている。地方から医師や医療機関が消え始めているのだ。
各地方は田園都市構想、定住圈構想や既述のハード面の整備や政策展開はそれなりにやってきた。その上でUターン・Iターンなどで地域移住・定住を呼びかけているが、安心してそこに住みたくなる身近な、しかも生きる上で切実な生活課題・インフラが危機にあるということである。
例を挙げれば、
① 保育園、こどもの遊び場などの整備、安心してお産のできる産院と行政による産後フォローと小児科医、小中高における教育環境など子供を産み育てやすい環境整備である。
② 何時心筋梗塞や脳卒中に襲われるかもしれないが、医師が不在で遠隔地に搬送されなければならない。これでは安心して生活は出来ない。
③ 急性期に基幹病院に入院治療し、回復期に転院する回復期病院が減り続けている。でも出て行けと言われたらどうすればよい。
④ 回復期の病院から退院を言われたが独居のため不安だ、老人保健施設など次なる施設に空きがあるか。
⑤ 要介護3になった。老人保健施設から比較的費用のかからない特別養護老人ホームに入りたいが、待機期間はどれくらいか。
⑥ 家族もいるので病院から自宅に戻るが訪問介護ステーションなどフォローしてくれる機能はあるか。
2021年から南庄内(鶴岡市を核に近隣2町)の医療崩壊を危惧する医師有志と介護施設、障がい者施設、地域包括センター、行政などに身を置く有志により私的研究会をつくり、市民向け6回の「講演会」や議会請願、その延長線上に現在「南庄内の医療、介護、福祉を考える会」を設置し、庄内保健所分所長を座長に月一のペースで勉強会を行っている。
医療、介護、福祉を網羅した安心ネット「地域包括ケアシステム」の核は医療であり、これが崩壊したのではこのシステムは機能しない。いずれ市立荘内病院を核とした「地域医療連携推進法人」立ち上げによって医療崩壊を食い止めなければならない。
2.コミュニティ循環経済ネットワーク構想
東北地方各県の基盤産業は農業である。この農業で食えない・生きられないから離農、後継者は他産業へ流出する。この状況に抗して東北地方という特性を生かした視点から「コミュニティ」を基礎に生活防衛を再考、再構築する必要がある。既に医療・消費生活協同組合が先駆的に取り組んでいる。この生活協同組合の考え方を基礎に自治体をも取り込んだ構想である。
持続可能な地産地消、地域循環経済を言われて久しいが現実は進んでいない。ならば国の施策待ちではなく地域から地方から実践を行っては如何だろうか。 (1) コミュニティ電力会社設立と発電・売電ネットワーク
自然エネルギー活用の一環として太陽光発電施設を大規模に作り電力会社に売電し利益を得ようと企んだ人たちは、いま廃業・撤退を余儀なくされている。発電・送電・配電を一元的に持つ「大手電力10社=原子力発電会社」は政権与党自民党と一心同体であることを忘れてはならない。代替自然エネルギーの国際世論と国内世論を見つつ、送電網とその容量が不足だなどの難癖をつけて買い控え、売電単価(FIT)の引き下げを行い、更なる原発依存を目論んでいる。
要は売買の土俵を政府と一体に恣意的に延び縮みさせているのだ。当初高い単価設定で儲かると思って投資したら見事に梯子を外されたのである。火力、原子力発電に頼らない再生エネルギーと言ってもその中身は様々であり、私たちが推進するのは海上や山岳地帯で自然を壊したり、また人体に負の影響が懸念される発電方式ではない。太陽光パネルも改良が飛躍的に進み、従来のパネルから窓ガラスに遮光ネット代わりに張り付け可能なフィルム型や屈折可能フィルムなどが開発され、登場間近のようだ。
そこで、市区町村レベルか都道府県単位による電力自給を「生活協同組合」という枠組みで実現できないか、その視点でもう一度生協という組織を見詰め直してみたい。
① 各家庭による太陽光発電の推進と自家使用
② 工場の屋根や耕作農地の上での太陽光発電とコミュニティへの売電
③ 配電線(6600V)が近い場所での小水力発電とコミュニティヘの売電
これら自然エネルギーは国と一心同体の電力会社に売電するのではなく、また送電網(6600V以上)を使わないで直接配電線(6600V以下)に接続し各家庭、200㎞以下業務用・自家用電気設備使用のオフィスや工場に売電する方式 (2) コミュニティ飼料による「養鶏、養豚、酪農・肉牛飼料の生産と販売」
① 耕作放棄地を作らず、農業で生計が立つよう転作補助金を活用した飼料用米、大豆、飼料用子実トウモロコシ、牧草などの栽培、加工食品・食べ残し食品残渣からのエコフィード製造
② 鶏も豚も牛も飼料の栄養価・品質が一定しないと育成、肉質に影響する。畜産農家が外国からの穀物飼料に依存しないコミュニティを基盤とした飼料原料供給
③ 主食用米生産を抑制する10a当たりの飼料用米、転作大豆、子実トウモロコシ、牧草栽培への転作補助額は農家にとって販売ルートが確立されれば採算ベースにのる。
④ 栽培する畑地・水田が地形的に配電線に近接している地形であれば農地の上にソーラーパネルを設置し売電によりトリプル収入になる。
⑤ 生産した飼料を栽培農家ごと一次処理後、提携飼料会社に委託加工させこれを畜産農家が飼料として購入する。この枠組み・事業を農事組合法人方式で構想できないか。