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展望

科学的社会主義の展望  2018年7月~12月


2019年7月~12月  2019年1月~6月  2018年7月~12月   2018年1月~6月


●月刊「科学的社会主義」No.248 2018年12月号
  アメリカ中間選挙と今後の世界
                          社会主義協会事務局次長  津野公男

 攻めきれなかった民主党
 アメリカの中間選挙は、下院での民主党の躍進、過半数の奪取と、上院での共和党の辛勝、多数派維持に終わった。当初民主党の優勢が伝えられていたが、最終盤になって中南米からのキャラバンなどをとらえて、移民(難民)による犯罪増加の危機感を煽り、民主党が勝てば犯罪が増えるなどのお決まりのデマ宣伝を駆使して巻き返しており、接戦が予想されていた。票の数えなおしなどの選挙区もあって、いくつかの選挙区が未定ではあるが下院(定数435、任期2年)では民主党が現有193から議席を伸ばし過半数(218)を超えた。いっぽう上院(定数100、6年任期。2年ごとに3分の1を改選)は、共和党の非改選議席は42と多く、改選議席9にどれだけ上積みできるかが焦点であった。
 選挙戦での幾つかの特徴的なことを紹介すると、まず投票率が大きく伸びている。それだけ国民の関心が高かった。性別では男性は51%が共和党、47%が民主党、女性は40%が共和党、59%が民主党に。年齢別では18~29歳の若者、いわゆるミレニアム世代は32%が共和党、67%が民主党、30~44歳の29%が共和党、58%が民主党、四45~64歳、65歳以上では50%が共和党に投票し、民主党をやや上回っている。また、人種別では白人の54%が共和党、44%が民主党、黒人では90%が民主党、中南米系、いわゆるヒスパニックスは69%が、アジア系では77%が民主党を支持している(毎日新聞18・H・8、米CNNなどの調査をもとに作成)。さらに、所得別では年収10万ドル(約1100万円)以上の層では約半数弱が、3万ドル(約330万円)以下層では60%強が民主党に投票している(日経新聞18・11・8)。たび重なる女性スキャンダルとセクハラの元締めのようなトランプとそのとりまきに対する女性の怒り、人種差別発言や移民政策にたいする黒人、ヒスパニックの怒り、そしてミレニアム世代と呼ばれる若者層では多額の奨学金返済に苦しめられるなど貧困に対する怒りがある。そして、総括的な思考法としてはこれも選挙での大きな争点であったLGBTや移民問題などマイノリティーや弱者に対する多様性を尊重する流れの強まりである。同時に行われた州知事選挙では、改選36州のうち16州が民主党、19州が共和党となっていたが、民主党の知事は16州から23州に増やしている(激戦で未定のフロリダ州除く)。
 民主党の善戦は誰も認めるところであるが、選挙戦にたいする大方の評価は、民主党が攻めきれなかった、青いウェーヴがトランプ支持の岩盤支持層の防波堤で食い止められたというものである。

 未来を予想させる変化、対立はさらに深まる
 しかし今後のアメリカの政治とって大きな変化を予感させるものがある。それはとくに民主党において見られるものであるが、まず多くの女性が立候補し、かつこれまで最多の女性議員が誕生していること、多くの現職議員が引退または落選し、議員の平均年齢が10歳若返っている。民主党の当選者ではイスラムの候補者が2人、原住民が1人等、実態的にも多様性を代表する候補者が当選している。女性では民主党28人、共和党7人。有色人種は民主党12人、共和党3人、LGBTは民主党1人、共和党なし。共和党では退役軍人が10人増えている。この議員の構造はこれまで政治の表舞台に登場していなかった層が躍進してきだしたことの証左であり、確かなアメリカの変化を予想させるものである。さらにより重要だと思われる点では、NHKでも特集を行っていたのでご覧になった読者も多いと思われるが、民主党の候補者選びにおいて(党内予備選などを経て決定)左派的な主張をもつ候補者が選ばれていることである。そして今回はサンダース型のグラスルーツ型選挙、選挙資金もサンダース大統領候補のように小口の政治寄附を大量に集め、若者や女性のボランティアが活躍している。ヒラリーが前に出るのでなくオバマが前に出たのもこのような流れに沿ったものだという分析をする人もいる。
 民主党は確かに理念としては共和党に比べればマイノリティーや貧困対策にカを注ごうというものではあるが、実体としてはGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などの多国籍企兼業やウォール街からクリントン財団が巨額の資金を集めていて、それが大統領予備選挙でサンダースを支持した若者や貧困層の棄権を招いたと言われていた。
 いっぽう共和党のほうはトランプ大統領の保護主義的な「アメリカ第一政策」によって、グローバル化の拡大によって競争力を失った伝統的製造業とその企業城下町の失業増加と衰退に不満を募らせる、ラストベルト地帯と呼ばれる地域の業者や労働者の支持を集めている。今回異なる現象としてはこれらの地域においても、大幅企業減税によって富裕層と企業に対する優遇に労働組合が反トランプに回ったという事例も報告されている。スイング州(選挙のたびに民主・共和の支持が入れ替わる激戦州)の一つであるオハイオ(大統領選挙ではトランプが勝利している)での民主党上院候補の当選などは労働組合の巻き返しの一環ではないだろうか。しかし、トランプ支持層には福音派などの超岩盤層や白人第一主義を掲げる排外主義者、銃規制に反対する全米ライフル協会などの頑迷な支持層が存在しており、民主党が左傾化するのに足して共和党はますます頑迷な右派に転じている。共和党の議員構成も中間派、良識派の比重は下がっている。

 捻じれ議会と米第一主義をさらに強めるトランプ政権
 中間選挙後のアメリカ政治は上院と下院のねじれ現象によって特に内政面では厳しいせめぎあいが続くことになるが、外交・通商面では大統領の裁量の幅が広いために、仮想敵を他国や移民にもとめる手法によってトランプ大統領に対する支持を維持する戦略にますます傾斜していくようになると言われている。中国との貿易戦争の激化や日本に対する要求も強まると言われている。中国に関しては、共和党だけでなく民主党のなかにもこれまでのロシア(かつてのソ連の時代における対ソ冷戦思考の延長)に対する伝統的な警戒感、そのためにニクソン、キッシンジャーによる中国だき込みが進められたがこの戦略は間違っていた、これからは中国の台頭を抑え込むという強硬派が増えている。日本との関係では軍事費増額、武器購入圧力とともに、日本が悪意的に「翻訳」しているTAGなるものが、実際はG(goods)の後に、他の貿易や投資についても協議するという文書が入っていて、今回の選挙結果に苛立つトランプ大統領が安倍政権のごまかしとは異なる厳しい対応をしてくることが予想される。今のトランプが、2年後に予定されている大統領選挙まで支持を維持していく政策はそれしかないからである。

 不安定さを増す世界政治
 欧州でも10月14日に行われたドイツ・バイエルン州議会選挙で、与党キリスト教社会同盟CSU(キリスト教民主同盟CDUの姉妹政党)が前回選挙比10.4%得票率を減らし大敗、単独過半数を維持できなくなっている。また、連邦政府で連立与党にある社会民主党SPDも10.9%得票率を落としている。躍進したのは緑の党であるが、全体としては右派政党が少しずつ票を伸ばし、かつボビユリスト政党であるドイツのための選択肢AfDが10.2%を獲得し、はじめて議席を得ることとなった。バイエルンはもともと保守層の強いところであるが、左派党は議席を得ることはできなかった。この連立与党の退潮、AfD躍進の流れはその後も続いており、メルケル首相は次期役員選挙で党首には就任しないと表明している。移民問題の深刻化やイギリスのEU離脱騒動、イタリアのポピユリスト政権によるEU基準(各国の財政赤字を対GDP比3%、政府債務残高を同60%以内に抑制)を満たさない予算作成などEUの団結を揺るがせる問題が生起している時期の、EUの実質的リーダーの役割を果たしてきたメルケル首相の指導力の低下、ドイツ政治の混迷はEUにとって大きな不安材料である。なお、EU基準を満たさない国はイタリアの他にオーストリアやポルトガルなど6カ国ある。

 激化する貿易戦争のかなたに
 アメリカ策一主義を掲げて追いすがる中国の成長を抑え込もうと必死のアメリカであるが、日本をも含めて今日のグローバリズムに変調をきたし保護主義が拡大するもとでの今後の世界経済について、これまでにも大胆な予想をしてきた水野和夫氏の見方は大変厳しい。「オバマ時代からグローバリゼーションは限界であった」「中国が描いているシナリオはあまりにも実現性に欠ける。もはや中国の生産力を吸収できるだけのフロンティアは、『一帯一路』のなかにも残されていない」「国民国家と資本主義という近代システムの終焉までにまだ数十年ある、その間にゼロ金利、ゼロ成長の定常状態を実現せよ」(ちなみに水野氏は先進諸国のこれ以上の成長は不可能、それを無理すれば破綻しかないという考え方)等々(『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』集英社新書)。
 水野氏は社会主義に関しては冷淡ではあるが、資本主義の将来に関しては極めて悲観的である。資本主義の将来に対する見方は私たちも共有できる認識である。
 アメリカの中間選挙で見せた「社会主義者だ」とののしられることを意に介しない若者や貧困層の願いや『科学的社会主義』で連載された伊藤誠氏の社会主義への展望について改めて深く読み解く時期である。
   (つの きみお)


●月刊「科学的社会主義」No.247 2018年11月号
  安倍政権の動向と私たちの課題
                           社会主義協会事務局長  福田 実

 9.19第3回南北首脳会談、9.20自民党総裁選、9.26日米共同声明、9.30沖縄県知事選、10.3第4次安倍改造内閣発足とこの半月の動きはめまぐるしかった。
 安倍政権第4次改造内閣の動向と私たちの課題を考えたい。

 1、逆風の中での新内閣発足
 ①自民党総裁選で安倍総裁は専ら改憲を重点に訴えたが、予想以上の石破票が出た。石破氏が安倍流9条改憲案に異議を唱え批判したことや地方の疲弊、この間の安倍政治への批判などが影響したと思われる。
 ②9月26日のトランプ大統領との会談も芳しくない。トランプが、「自動車産業防衛」のために安倍を恫喝して、日米FTAに引きずりこんだ。「自動車産業を助けるために農産品を犠牲にするのか」と農畜産業や野党から糾弾された。「TAGはFTAとは違う」と、ごまかしを口にし、農産品への関税は「TPPで約束した内容が限度」などと居直る。TPPで関税が廃止・大幅引下げされることも、大量の米国産農産物の低関税も、日本農業を崩壊させるし、食の安心と安全も危機に晒される。そのうえトランプ大統領に「もっと米製品を買わないとダメだと言い、日本はすごい量の防衛装備品を買う」とバラされた。イージス・アショア等々を高値で買わされようとしている。
 ③他方、9.13第3回南北首脳会談は停滞していた米朝交渉を再開させ、11月の米国中間選挙を前後してトランプ大統領の訪朝、米・朝・韓(場合によっては中国も)会談を実現し、朝鮮戦争終結宣言で合意する可能性を大きくした。すでに南北間の軍事協議で急速に軍事境界線周辺の非武装化、飛行禁止区域や「平和水域」の設定が具体化されている。
 昨年、モリカケ疑惑で支持率が急落したが、解散総選挙で多数を占めたのは、野党の混乱もあるが、北のミサイル・核兵器を「国難」としたことも大いに与った。その後も朝鮮半島危機を神風の一つとしてJ・アラートを乱発し内閣支持率を立て直してきた。ところが朝米首脳会談で事態は劇的に転換し、「北の脅威論」の効き目はなくなった。一方、拉致問題を解決するため「金正恩委員長とさしで会う」と虚勢を張るが、実際は「犬の遠吠え」で、韓国の文大統領の見事な外交の足元にも及ばない。
 トランプ大統領が北への武力行使を公言すればそれを支持する世界でも珍しい国の一つだと自認し、融和に転ずると豹変し称賛する態度は世界の嘲笑の的となっている。
 ④そして大痛打は沖縄県知事選。玉城デニーは39万6632票を得て佐喜真淳に圧勝した。前回は自民党系候補推薦を出さなかった公明党が今回は数千人を本土から投入し、徹底的な組織選挙を展開し、業界団体を動員した自民党と合わせて「胡散臭い」期日前投票やネットでの玉城誹謗フェイクニュースの拡散など異常な自公陣営の動きだった。
 こういう悪条件に沖縄県民は見事に打ち勝った。玉城候補の訴えが県民の心の琴線を捉え、翁長元知事の遺志をつぎ県民の矜持を示す大きなうねりとなった。安倍政権に対略する人々へ限りない自信と勇気を与えた。

 2、それでも改憲発議の陣形
 ①これだけ幸先悪い安倍政権に9条改憲を発議する力があるか。安倍政権はこれが最後だ。後がない総理となると、死に体化することが多いが、逆に何をしても尻拭いは次の政権にさせれば済む。だから財政赤字お構いなしのバラマキも躊踏しないし、死に物狂いでやるだろう。
 ②安倍改造内閣と自民党の新人事は明らかに改憲シフトで、全メディアが指摘している。まずは党が肝要だ。党の最高意思決定機関は総務会だが、会長には安倍側近の加藤勝信が、党の憲法改正推進本部長にも側近の下村博文が就いた。選挙対策委員長は参院選や国民投票の実施でも責任を持つ役職だが、安倍の血盟の友・甘利明を据えた。戦争の常道は、まずは決定的な時に味方の結束が乱れない配置である。
 ③公明党はどうか。沖縄知事選に数千人を本土から投入した。山口代表は口では改憲慎重論を唱えるが、その姿勢が最後まで続くか疑問である。沖縄県知事選でも創価学会の良心的な人びとの反乱があり、公明支持層の一定部分が玉城候補に流れたが、知事選投票日に開催された党大会では、幹事長に改憲積極論者と言われる斎藤哲夫が就いた。
 ④そして安倍首相は勝算なく賭けに出ない。改憲という財界や保守政治勢力の戦後最大の課題を成功させるために改憲勢力をガツチリ固め、日本会議など右翼を煽り、過半数を確保する。既成事実さえつくれば、あとは大胆に集団的自衛権行使に踏みこみ、戦争参加自体を既成事実化し、軍事予算も2倍3倍と増額し、次は9条2項の抹殺を目論む。

 3、問題は野党。税・社会保障政策での対抗案を
 ①体制総体として安倍が勝負に出ることを容認した大きな理由は、野党の不団結と非力にある。内閣と自民党支持率は持ち直したとはいえそう高くはない。しかし立憲野党の支持率が低下している。安倍政権を糾弾するのは簡単だが、立憲野党の低迷をどう立て直すかは容易ではない。
 ②沖縄県知事選はどうして勝利したか。立憲野党が力を合わせたこともある。しかし何より大事なのは、辺野古基地建設に反対で一致し、ぶれなかったことや基地交付金に頼らない沖縄振興策だったと思う。
 ③参院選に当てはめるとどうだろう。沖縄と同様、共産党から国民民主党までの野党共闘の実現は必須だが、政策的には何も見えない。共産党が政策協定を求めているのは当然だが、現状は立憲民主と国民民主で候補者調整するなど、政党組み合わせの議論だけになっている。
 むろん政策協定にそう多くは望めない。「安倍政権下での改憲発議には反対」など大事な点で野党共闘の明確な態度が示せれば良い。しかし心配なのは、税と社会保障という有権者の一番関心ある課題で野党の明確なアピールが見えないこと。なかでもウイークポイントは消費税である。
 ④安倍首相は内閣改造後の記者会見で消費税増税に言及しなかった。自民党内には三度目の増税延期への期待がある。改憲のためならポピュリズム的対応をするのが安倍政権である。一方財界や「朝日」などメディアは、再延期反対だけでなく、社会保障改革と合わせ「10%の先」の増税検討を求めている。
 ⑤税と社会保障の課題について立憲野党はどういう対抗戦略を明示すべきか。立憲民主党など旧民主党系は「安倍政権の下での増税には反対だが財政赤字は先送りできない」というスタンスで対案らしきものは見えない。社会保障拡充に「オール・フォー・オール」で対処しようとすれば消費税増税の土俵に乗る。
 ⑥まずは、消費税5%への引下げを主張する自由党(含・山本太郎)・社民党や緑の党との連携を強化し、共産党、市民連合とも連携し、その力の基で立憲民主党をはじめとするその他の立憲野党との政策・共闘構築を図ることが必要ではないか。もちろん、地域によって事情は違うがー

 4、1%に偏在している富を99%に戻せ。
   労働者・大衆を私たちの側に

 ①国民の関心が高い「税と社会保障」の課題をはじめ私たちの立場は明確である。一言でいえば「憲法を生かす政治の実現」である。軍備増強でなく「戦争放棄(9条)」への道、格差・貧困容認でなく 「生存権(25条)」を豊富にする道、世帯単位等でなく「個人の尊重(13条)」への道等々である。また、税については、自民党政権に破壊された応能負担を復元しなければならない。
 ②暮らしを豊かにすることが急務である。山家悠紀夫氏は「『家計調査』という政府の統計で勤労者世帯の2017年の可処分所得(収入から税・社会保険料を引いたもの)を2012年と比べると、5年間で2.2%しか増えていない。一方、消費者物価は、消費税増税、円安による輸入品の値上がりで、この5年間で4.4%上昇。差し引き、実質可処分所得は2.2%減」と試算している (全国商工新聞18年10月8日)。最低賃金をはじめとする賃金の大幅アップ、生活を保障する年金制度の構築などが必要である。
 ③貧困対策が急務である。生活保護受給者は」2017年の受給者数(1カ月平均)は、約212万5000人。しかし、捕捉率20%前後と考えると、実際の貧困層は約1000万人になる。安倍政権は2013年から3年間かけて1270億円削減(▲6%)し、今度は18年から3年間、受給世帯の67%を対象に210億円削減(▲5%)する。
 この安倍政権の貧困層への姿勢に対し、9月24日、国連人権高等弁務官事務所の特別報告者4人が連名で「貧困層が尊厳をもって生きる権利を踏みにじる」「全ての人に基本的な社会的保護を保証する義務がある」と警告された。政府は警告当日「抗議」したというが二重に恥ずかしい話である。
 安倍政権は「骨太の方針案」で19~21年度の3年間で「財政健全化の基盤強化」として、社会保障(医療・介護・年金)のさらなる負担増・給付減メニューを考えており、姑息にも19年の参院選後に具体化して来る。
 ④職場の改善も急務である。過労死をもたらす長時間労働、大量の非正規職員の活用と使い捨ての中で、労働分配率は前年度から1.3%下がり66.2%となり43年ぶりの低水準という。内部留保は446兆円超で最高額更新を続けている(17年度末)。搾取が強化され続けている。「結婚できない、子育てできない社会」を放置し、少子高齢化社会ができてしまうと、今度は「生涯現役」「1億総括躍」のスローガンで、「死ぬまで、誰もがもっと働け」である。
 ⑤大衆を我々の側に獲得するためにもっともっと我々の知力と行動が求められている。


●月刊「科学的社会主義」No.246 2018年10月号
  腐乱と再建
                           社会主義協会代表 今村 稔

 この駄文を起しているのは2018年9月の初めである。日の目を見ることになるのは10月1日前後である。「展望」である以上、先の見通しにも触れないわけにはいかない。
 この一カ月の間には、自民党総裁選挙(9月7日~20目)、沖縄知事選挙(9月22目~30日)がある。
 わが国の将来に大きな影響を与えるに違いない二つの出来事の結果が明らかでない中で、「展望」を試みるのは、容易なことではない。その上、日頃口にする唯物弁証法を土台に据えた分析力なるものの「力量」が問われる。本音をいえば、足のスクミを感じる嫌なものである。

 理想が消える?

 見せかけであっても、心にもない虚言であっても、政治にたずさわる者は、口では理想や正義を語らねばならない。ましてや権力の座を占有し、それをほしいままに運用しようと欲する者にとっては、そうすることは己の欲に発するのではなく、国民大衆を理想に導き、生活の安定に資するためのものであるという粧いをこらさなければならない。国民を導く理想をしっかりと胸に抱き、大衆から尊崇されるに値する人格識見の士であることを誇示しなければならない。
 政治で人の上に立とうとする者にとって、それは必須の要件であり、パフォーマンスである。
 ところが最近、政治の鉄則、常識とさえなっていた虚飾の理想や正義を語ることは、必要のない無駄であると公然と語るかのような政治的指導者が現われている(いや、虚飾の正義・理想さえ語れなくなっているのか?)。
 政治に正義や理想という価値観が飾りであったとしても喪失している。捨てられている。ケジメがなくなっている。判断の基準を見失って通じるはずのない嘘を平気でつく。
 地球上でもっとも重要な人物であるはずのトランプ米大統領は、はじめから理想や正義というものを屑籠に放りこんで、唯一最高の価値は 「アメリカ・ファースト」というナショナリズムで飾った「取り引き(ディール)」であるとのたまう。
 このトランプの荒い息遣いに心安らかでないわが安倍晋三はといえば、理想や正義や政治倫理という引力の圏外に飛びだそうとしている。彼は今、賞味期限切れとなった自民党総裁に「賞味期限3年延長」のシールを貼ろうと懸命である。
 理想や正義や倫理の笹縁を飾った服をまとえなくなった安倍晋三が連想させるのは童話の「ハダカの王様」である。自らそこにはまり込んだ本人はやむをえないとしても、それに対して直言、諌言をする「気骨の士」が全くいないことである。「お似合いです」とはやしたてる侯臣(ネイシン)ばかりである。
 われわれはかねてより安倍政権の度を増す政治的堕落を言い募ってきたが、正義や理想という価値観を喪失させた政治の出現は、単なる堕落の重なりではなく、腐乱といってもいい質的な深化現象である。しばしば使われる一言葉を借りれば不可逆的な劣化であり、腐乱の深化である。
 厳めしい笹縁の服を自ら脱ぎ捨てたハダカの王様、へつらう取り巻き、雲散した硬骨の志という安倍政権の実態図は、裏を返せばそのまま安倍一強のダマシ絵である。しかしわれわれは、ある種の疑問を感じないわけにはいかない。
 童話にも登場していた、王様のハダカを見て大笑いする大衆に重なる心配である。現代もたしかに大衆は王様を見てひそかに嘲笑っている。しかしその肌の色艶にはかつての健康な張りに比べれば衰えが感じられる。「なにを今さら…」 「どうせなるようにしか…」「所詮自分は…」等々の雰囲気も感じられる。未来に期待を寄せ、たくましく連帯を紡ぎだそうとする人間的な力に錆や黴の付着が感じられる。人間であることの自覚が生みだす生気や喜びは、弱っているかのようである。
 ここ数年間に暴露された神戸製鋼、三菱マテリアル、JR西日本等の検査の不正、捏造等々はとどまるところを知らず全製造業、全企業に蔓延するかのようである。度重なる謝罪会見は儀式化している。社会的責任は利潤や権勢という力によって後景に押しやられ、隠蔽、腐敗させられている。
 これらは生産現場に限らず、むしろ嚆矢(コウシ)の如く社会、人間の全活動に拡がっている。官僚の公文書偽造と虚偽証言、セクハラ、パワハラ、医療・福祉分野の自己否定的な所業、はては教育、スポーツにいたるまでの人間の活動を利潤、「生産性」に置き換えて恥じない風潮。
 大きなヒビ割れを現出させているアべ政治の腐乱・劣化は、社会全体に毛細管の如く拡がっている社会的劣化と癒着している。嘲笑うが怒らない民衆、生命の井戸を埋めている砂礫を掘り捨てることになお不活発な民衆を前に、支持率よりも不支持率の高いハダカの王様は「君臨」しているのである。

 どこまで堕ちる?
 7月初めの「赤坂自民亭」事件は、もうすでに旧聞の域かもしれないが、安倍政治が「国民」「大衆」を視野から放逐したことを「証言」する象徴的な出来事であった。
 広島、岡山等の大水害の現場では避難勧告がだされ、それに備えた諸活動が始まっていたという時(7月5日)に、赤坂の議員宿舎で「赤坂自民亭」と称する酒宴が開かれていた。
 さすがに麻生副総理は高祖父暗殺(石碑がある)の場所であったせいか参加していなかったが、集まった顔ぶれはといえば、御曹子達の、まさに驕る平家の酒盛りである。現地選出の岸田前政調会長、自衛隊の災害出動の責任者小野寺防衛相、オーム死刑囚の執行署名直後の上川法相(政権への影響は官邸お庭番である情報官によって調査済)等々。そしてなによりも、すべてにわたって責任者である安倍晋三首相。この酒宴のさまを安倍一強を誇示せんとしたか、西村官房副長官は各方面にツイッターをした。森友・加計の諸問題を踏みこえた政権はさらに力を増した?
 平家にあらずんば人にあらず、という驕りが安倍政権に充満し、蝟集する群れによって国民の姿は視野の外に追いやられ、群の中でもっばら囁かれているのは、総裁選後の論功行賞や報復についてであると聞く。
 「正直・公正」が、総裁選の争点になっているということ、さらにはそれを個人攻撃であるとする非難があること等々を聞いて驚かざるをえない。政策以前の、レベルが低いというか、根元的というか、そういうものが争点として横たわっているのである。自民党内に、安倍政治を信頼しがたい国民に対する虚偽と見なす部分があるということである。党のメカニズムや選挙制度のゆえに、公然とは現われ難い根元的な不信感が、人格的批判があるということであろう。自民党の暗部がはからずも見えたのである。しかしそれは、衝撃的であろうが総裁選挙を通じて、党に変化をもたらすものとはなりえないであろう。突如として自然発生的に示された暗部は、それ自体が長期の劣化の産物であり、いずれ埋められ消されていくであろう。森友・加計という恥部に触れることを用心深く双方が避けた総裁選挙であってみれば、自民党政治の劣化過程は選挙を挟んですすむであろうし、国民を強く引きつける変化は生じないであろう。
 総裁選挙を消えた花火のように思わせて、党内運営すら権力政治化して、自民党は劣化・腐乱の歩みをつづけるであろう。劣化は、党内からの(反省的)作用によって止まったり、改まったりすることはないであろう。
 自明のことであるが、自民党政治の劣化はそのままわが国政治の劣化である。全力をあげてわれわれは、それに対抗し、対決を強めていかなければならない。
 先にも述べたように、自民党政治の劣化、安倍政権の暴走を許した裏側(の理由)には、自責的に認めなければならないわれわれの側のさまざまな後退、逡巡、怠惰、思考停止など人間の積極性を奪ったり、白線するものが重なったということがあった。人間的な社会的力を鋭く強く、引きだし、成長させなければならない時に、逆に鈍磨を防ぐことに極めて不十分であったということがあった。この10年近くの特徴は、人々が感じ、怒り、考えることに飽きたかのようだったということ、お互いにそれを引きだし合うことに、無関心を忍び込ませたということではなかったか。
 安倍政治は劣化を重ねるたびに、国民の生きる力(人間性)を削りとり、奪いとり、萎縮させていった。われわれが、劣化・暴走する安倍政治に対決し、その打倒を目指して達しくなろうとつとめる過程は、錆つかされた人間性の輝きをとり戻していこうとつとめる過程でなければならない。人間であることに誇りを感じ、人間らしく思考し、人間の絆をつくりだすこと(これらはまるで呪文をかけられたかのように、この間後退りさせられていた)を意識し、胸の奥にたたんでいかなければならない。
 運動の前進の力は、人がつくりだす力にほかならない。いまこそ、人間の社会的生命力を呼びさまし、拡げ、積み上げていかなければならない。意識的な上にも意識的に人づくりに意を用いなければならない。もちろんそこには、リーダーづくりも組み込まれなければならない。
 人づくりにたいして対をなすものは、絆づくり、仲間づくり、仲間への語りかけ・話し合いである。スマホに独占されたかのような情報交換に、人間らしく体温や感情や血が交った、思考の刺激に満ちた情報交換に置きかえていかなければならない。安倍がすすめる政治・社会の劣化にわれわれが対置し、土台に置くものは「人間の復権」である。
 来年の四月に迎える統一地方選挙、7月の参院選挙は、安倍政治の前に立ちふさがるたたかいであるとともに、人間の復権を前進させるたたかいである。
 どれだけの人の心に鍬を打ちこめるか。そこにどれだけの芽吹きがおこるか。どれだけのたたかいの場(候補者の擁立、有権者の要求の結集)をつくり、拡げられるか。
        (いまむら みのる)


●月刊「科学的社会主義」No.245 2018年9月号
   前進のために、飛躍のために
                           社会主義協会事務局次長 福田 実

 1.働く者・大衆の実態に目を向けたレーニン
 「(レーニンは)労働者たちと一緒にマルクスの『資本論』を読んで、それを説明してやっていた。けれども彼は授業の後半部分はいつも、労働者に向かって彼らの労働のことや労働条件のことを問うだけにしていた。彼は労働者に向かって、彼らの生活が全体としての社会の構造とどんな関係にあるかを見せてやり、また今の制度は変えることができるものであること、それにはどうしたらよいかということを説明してやった。理論と実践の結合―これがこういう会の中で(*レーニンが)やっていた仕事が他の人と違う点であった(中略)労働者の日常生活の要求を基礎にしてアジテーションをやる方法は、我々の党活動の中に深く根を下ろした。私はこの方法がまことに有効なものであることが、ずっとずっと後になって始めてよくわかった」
 「この時期にやったことは、英雄的な行為ではなくて、大衆と密接な結合をつくりだすことであり、大衆に近づくことであった。我々は、大衆が最も望んでいることを言葉に現すことを学ばねばならなかった。我々が大衆を理解し、また大衆が我々を理解するようにするのを学ばねばならなかった。大衆を我々の側に獲得することが目標だった。けれども実にこのべテルブルグで活動していた間に、(*レーニンは)労働者大衆の指導者としての修養を積んだのであった」。
 以上は、向坂逸郎著『レーニン伝』の「第5章ぺテルブルグ」(*1893年~1897年)で紹介されているクルブスカヤ著『レーニンの思い出』からの引用である。二つのセンテンスの内、後半部分は本誌に二度紹介した。
 生活も、暮らしも、職場も厳しくなる中で、何故、私たちは大きく前進できないのか。大衆との乖離があるのか?大衆との接点が弱いのか? 理論と実践の結合が弱いのか? の要因を探るにあたり、上記のクルブスカヤの回想は参考になると思う。

 2、労働者・大衆の意識を掴もう
 世論調査は現状の労働者・大衆の意識のバロメーターといえる。各報道機関が毎月行っているが、「不正確」「操作」との指摘もあるが、それに代わる調査は見当たらないし、国民意識の大枠の傾向を掴むことはできる。それを分析して、彼ら・彼女らを「我々の側に獲得」したいと思う。
 国会がほぼ終了する7月21日以降から末までの世論調査を見ると次のようになる。先ずは、安倍内閣の支持率である。マスメディア7社平均は、支持率で41.1%、不支持率で44.5%である。支持と不支持の逆転は5か月ほど続いている。国民の過半数は安倍政権を支持していないのである。野党が団結して選挙すれば勝てる可能性を示唆している。
 さて、支持の理由と不支持の理由は下記の通りである。
 朝日新聞では、支持の理由は①他の内閣よりよさそう(51.3%)、②支持する政党の内閣(17%)、③安倍首相を信頼(14.5%)、である。支持しない理由は①安倍首相が信頼できない(41.6%)、②政策に期待できない (31.7%)、である。読売新聞では、①これまでの内閣より良い(43%)、②首相の指導力(13%)、⑨首相を信頼(11%)、④政策への期待、である。支持しない理由は、①首相が信頼できない(53%)、②政策が期待できない(16%)、が大部分を占める。毎日新聞では、①他に良い人や政党がない(49%)、②安倍さんを評価している(3%)、政策に期待ができる(15%)、である。支持しない理由は、①安倍さんを評価してない(48%)、政策に期待できない(35%)、である。
 政党支持率における自民党支持は平均40%前後である(毎日30%、産経37.3%、日経新聞38%、読売41%、朝日42.1%など)。
 先の通常国会で課題になった個別政策では、カジノ実施法・改正公職選挙法・モリカケ疑惑解明、働き方改革関連法・西日本豪雨の復旧・復興の政府対応など政権の政策・対応に反対が圧倒的又は過半数を占めている。これは、前述の世論調査の「政策に期待できない」に一致する。つまり、安倍政治(政策)支持は少数なのである。
 問題は、支持理由の半分を占める「他の内閣より良さそう」「これまでの内閣より良い」「他に良い人や政党がない」である。つまり、安倍政権に代わる現野党の不団結と生活に直結する統一的な政策、つまり安倍政権(自民党)に代わる政権(受け皿)と将来の日本の社会を示す展望・政策(とくに、労働者・大衆を豊かにする政策)が見えないのである。私たちの任務の一つはここにあると思う。

 3、安倍支持基盤を突き崩そう
 以下は、橋本健二早稲田大学教授(社会学)の著書『新・日本の階級社会』からの引用であるが、安倍政権打倒のために活用したい部分が多々ある。例えば「格差拡大を容認し、自己責任論を強く支持し、所得再配分をかたくなに拒否するのは自民党支持者の特徴」「所得再配分を支持する度合いの強い人の比率は、自民党支持者ではわずか10.3%だが、民進党支持者で31.8%、公明党支持者で25.7%、共産党支持者では44.4%にも達している。所得再配分への賛否は、支持政党を決めるもっとも重要な要因のひとつになっているようである」「新中間階級(専門・管理、上級男性事務職)と正規労働者(新中間階級を除く)は貧困層に対して現状ではかなり冷淡」「多数派である無党派層は、格差拡大の事実を認め、これに批判的で、また自己責任論を否定するところまでは自民党以外の支持者に近いが、所得再配分を支持するまでには至らない。まさに格差に対する意識の上でも中間的」「アンダークラス(パート主婦を除く非正規労働者)では、所得再配分を支持する人ほど排外主義的な傾向が強い」などなど。
 著者の結語は「もし格差社会の克服を一致点とする政党や政治勢力の連合体が形成されるなら、その支持基盤となりうる階級・グループは既に存在しているといっていいだろう。アンダークラス、パート主婦、専業主婦、旧中間階級、そして新中間階級と正規労働者のなかのリベラル派である」「格差社会の克服という一点で、弱者とリベラル派を結集する政治勢力の形成。格差社会の克服は、したがって日本社会の未来は、ここにかかっている」と断言する。(『新社会党政策委員会ニュース』33号18年7月号掲載の拙稿「書評」参照)
 格差容認・自己責任論の裏側には、「保身」があると思う。働く人たちが生み出した巨万の富はある。しかし、それが1%(未満)に偏っている。それを99%に取り戻すこと、この共有化ではないだろうか。
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 4、地方選・参院選へどう臨むか
 小熊英二慶鷹義塾大学教授(歴史社会学者)は次のように
指摘している。
 「安倍首相の周辺は、『日本人は右が3割、左が2割、中道
5割』と語っているという。結果は本稿の仮説とほぼ一致した数字である」「日本の有権者は約1億人。『右3割、左2割』なら、自公が3千万票、野党が2千万票となる」「そして、12年以降の国政選挙投票率は、いつも50%台だ。つまり「中道5割」の多くは棄権している。この状況だと、リベラル(2割)は必ず自公(3割)に負ける。野党が乱立すればなおさらだ」。
 「(*17年10月選挙で)立憲民主党の健闘はリベラル層の底堅さを示した。自公に勝ちたいなら、リベラル層の支持を維持しっつ無党派票を積み増すの形しかない。保守二大政党など幻想であることを悟るべきだ」「民主党が勝った09年衆院選はどうか。この時の投票率は69%で棄権が3割。民主・社民・共産は選挙区で3783万、自公は2808万。両者の比率はぎっと4対3となる。リベラル(2割)に無党派票(2割)が加わり、自公(3割)に勝った形だ」。
 「最後に書く『重力の法則を知らなければ飛ぶことはできない』といわれる。飛ぶためには、知性と意志の双方が必要だ。意志のみで飛ぼうとしても落ちるだけだが、法則を知っているだけで飛べるわけでもない。本稿は分析を重視したが、分析だけで未来を予測できるわけではない」。
 以上の分析の内に、国政選挙や地方選挙の闘いを進める当り吸収すべき材料があると考える。(【参考文献】小熊英二著「「3:2:5」の構図―現代日本の得票構造と「ブロック帰属意識」」世界2018年1月号、朝日新聞・論壇時評『希望』が幻想だったわけ」17年10月26日)

 5、新社会党の前進を
 新社会党は小さい、しかし全国政党である。国会議員はいない、しかし地方議員を擁している。年配者が多い、しかし優れた活動家であり、私利私欲で動かない思想を堅持している。年齢も昔に比べれば「七掛けの年齢・健康」で、例えば60歳だとしても昔では42歳。70歳でも49歳である。働き盛りである。
 党の活動の要石は大衆と接する総支部・支部と思う。頭脳と言うべき中央本部の充実を図り、都道府県本部を中継拠点とし、中央の考えが直ちに総支部・支部の活動を通じて大衆に伝えることが必要と思う。例えば、中央本部が大衆向けに作成するビラがその週の内に、数十万人の大衆の手元に渡せる。そうした大衆との接点が求められていると思う。「大衆を我々の側に獲得する」。それが新社会党の前進と飛躍に直結する。
                                    (ふくだ みのる)


●月刊「科学的社会主義」No.244 2018年8月号
  戦力という愚かな力を持つことで平和は得られない
                           社会主義協会事務局次長 津野 公男

9条をアジアに、世界に
 「…あなたも、感じるだろう この島の美しきを、あなたも、知っているだろう この島の悲しみを、そしてあなたも私と同じこの瞬間を一緒に生きているのだ、今を一緒に生きているのた、だからきっとわかるはずなんだ、戦争の無意味さを…戦力という愚かな力を持つことで、得られる平和など、本当は無いことを」

 6月23日、沖縄の慰霊の日に港川中学三年生の相良倫子さんが朗読した詩、「生きる」の一部である。この詩のもつ迫力を前にしては、戦をもてあそぶトランプ大統領や金委員長の精一杯のパフォーマンスも色槌せ、虚しい限りである。
 シンガポールの「米朝会談」では、ひとまず、一触即発の危機的状況の回避には成功した。さらに踏み込んでの朝鮮半島の非核化に至るプロセスに関しては継続交渉、そして触れられなかった「休戦協定から終戦協定」の締結までは進むとみられる。その後についてはいろいろと取りざたされているように、トランプ大統領が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する経済的支援にまで進むのか、また北朝鮮がいわゆる「開放経済」政策にアクセルを踏み込むのかに応じて朝鮮半島のみならず北東アジアの軍事・政治あるいは経済的連携は大きく変わろう。とくに韓国は、ロシアとの経済的連携強化を目指した交渉を進めており、北朝鮮や中国などをも巻き込んだ「北東アジア・環日本海経済連携」(冷戦終了直後にむしろ日本が主導しようとしていた経済政策)をめざしているように見える。日本にしても控致問題に進展があれば、これまでの敲視政策の放棄が迫られるし、「ピョンヤン宣言」の履行も日程に上ることになろう。いずれにしても、局面が大きく転換する可能性がある。もちろんあくまでも可能性であるが…。
 私たちは、「情勢に振り回される」のではなく、この機会をとらえて 「北東アジア非核地帯」(古くからある構想)の実現やこの地域の軍縮推進などの運動を国際的にも強化し、平和を愛するアジアの人々とともに、日本はもとより各国の軍抜推進の政治勢力に対抗していく運動を強めていくことが課題に上ってきている。被爆国である日本政府が 「I CAN」の進める運動に対して、冷淡極まりない対応しかとっていないことも併せ糾弾し、非核・軍縮・平和運動を高めていく絶好の時である。「今こそ9条をアジアへ」である。そして、後述するように私たちがこの機会を活用し対抗的運動をつくりだすことができなければ、安倍政権の延命や改憲を食い止めることはできない。
「武力には武力を」の危険な風潮
 米朝会談直後には、安倍政権の外交政策の無策ぶりをあざけり、安倍政権に対する批判が高まるかのような楽観ムードも流れた。しかしながら大方の期待とは異なり、世論調査では安倍政権に対する支持率は急上昇している。『日経新聞』と『テレビ東京』が22〜24日に行った世論調査では、安倍内閣に対する支持率が前回(5月下旬)比10ポイント上昇の52%、不支持率は二ポイント下がり42%となり、支持と不支持が逆転した。男女別にみると、安倍政権に対する支持は男性56%、女性45%と依然として男性の支持が高いことも安倍政権の特徴である。
 なお、同じ時期に行われた『毎日新聞』の調査でも、『日経』ほどではないが支持三六%(5%増)、不支持40%(8%減)と、逆転まではいかないにしても安倍政権に対する支持は上昇している。その他の調査でもこの傾向は同様だ。安倍政権に対する支持要素としては、トランプ大統領の制裁と威嚇政策に追随した安倍政権の外交政策を支持する(「外交感覚がある」37%)、安定感がある36%等である。むしろ、外交政策の無策ぶりが支持された結果となっている。同じ現象はアメリカでも起こっている。11月に中間選拳
(上院定数100の3分の1改選、下院は全員改選)を窪えたアメリカでは、トランプ大統領に対する支持が急増した。ギヤラップ社によると、6月中旬のトランプ大統領の支持率は45%となり、この時期の支持率としてはオバマ氏やクリントン氏の支持率に匹敲するようになっている。もちろんトランプ大統領が「米朝会談」を急ぎ、具体的な諸課題での話めに関しては不確かなものであるにもかかわらず、成功、成功と離すのは中間選挙を意識したものである。彼にとっては、世界の心配など関係ないことであり、中間選挙を有利に導くことだけを憲識したディーリング(商売)に他ならない。
 「武力には武力しかない」 という思考方法が支持されたとしたら、不幸なことだ。折しも、いま多くの諸国では、寛容さが乏しく少数派を法的、暴力的に抑圧する強権政治が風潮となっている。また、ポピュリズム政党と右翼政党が連立政権を組閣したイタリアのように、ポピュリズムの影響力も落ちていない。それだけ、この間の野放図なグローバリズムの進展が民族的対立を拡大し、国内にあっては格差拡大を生み出し亀裂を深めているからである。
期待される野党共闘
 もっとも、内政に限れば個々の政策、課題となると政権にたいする支持は圧倒的に低い。
 たとえば、加計学園問題に関しては納得できないば70%、森友問題が決着してないは75%を上回り、IR(総合型リゾート実施法=カジノ法)に反対は五三%、賛成は33%に過ぎない。働き方改革に対する反対も多数派だ。この面では、有権者は健全である。
 『日経新聞』は、『世論調査考』「安倍内閣 強さともろさ」を連載している。調査時点では、無党派層は全体の30%、2013年には18%であったが、14年に41%となり、いま30%だという。今月の調査では無党派層の内閣支持率は24%、不支持率は63%となっており、政権発足時には支持率30%、不支持率四五%であったから無党派層のなかでの内閣不支持率は増えていることになる。そして政策的にはIR法などには反対が多いという。したがって、『日経新聞』の見立てでは、無党派層には自民党支配に批判的な考えを持ちつつ、野党の分裂で野党を支持できない人たちが多いので、与野党一騎打ちの構図になれば野党候補に投票する可能性もあるという。自公政権(これに維新を加えてもよい)の「強さ」は他の野党の頼りなさによっても生み出されているということである。したがって、参議院選挙では野党共闘の成立は必須の条件である。
改憲に対して、未来社会を展望して
 若者層の安倍政権にたいする支持率は、18〜29歳で63%、30歳代で56%と異常に高い。50歳代44%、60歳代は44%で不支持率のほうが高い。若者の支持率が上
昇してきた背景は、有効求人倍率が高い。やや金持ちの年寄
りにとっては株が商いということにある。しかし、ほんの10年ちょっと前の2008年の失業率、株価はどうだったかを思い出せばよい。現在は、あのどん底期から、世界的な景気循環の下で上昇経路をたどってきたにすぎない。しかも情けないことに、安倍政権や黒田日銀の何らかの努力や巧妙な政策で生み出されたものではまったくない。労働力不足は、少子高齢化による著者不足。労働力不足が生み出したものである。もちろん相対的な過少であり、景気が逆転すればこの少なくなった労働力も過剰となる。ようするに、「潜在的成長率」 (日本の経済力) は着実に劣化しているのであるが、労働者、国民は高い成長を追い求める必要もないし、成長の果実が労働者国民に分けられたわけでもない。再配分の強化こそが重要なのである。
 米中貿易「戦争」は、トランプの気まぐれから始まったが、安全保障、次世代の技術でのアメリカの覇権の論点を展開するライトハイザー(米通商部代表)などの強硬派が政権内に力を持ってきつつあると言われている。民主党内でもそのような意見が強まっている。もし、そうなれば長期にわたって抗争が続き、グローバル化の流れも変質するかもしれない。安い賃金や低い法人税をめざして国境を越え、自国経済に無頓着な多国籍企業の専横が見直される可能性さえある。
 他方では、右派ポピユリストの跳梁が強まるかもしれない。そのうえ、現景気循環もそろそろピーク局面に差し掛かっている。いずれにしても、社会の亀裂はさらに深まり、対立は激化せざるを得ない。
 私たちは、厳しさが増すであろう今後の闘いに備え、非核・平和運動、そして反貧困の対抗運動を広く深くつくりあげなければならない。そしてやはり資本主義に替わる社会を展望する理論的研鏡が求められている。
                                           (つの きみお)
〔追記〕
 執筆中に、オウムの幹部たちに対する一斉死刑執行が強行された。
 「元日亨 が変わる前の「平成」のうちに片づけてしまうという乱暴な説もあると聞くと仰天するしかない。いま先進国で死刑制度を維持している国は極めて少なく、世界の声もオウムの犯罪の残虐さは糾弾したうえで、死刑制度を持つ日本に対する批判ばかりだ。思想的居場所を探す若者層は常に存荏する。とりわけ、格差が拡大し、階層固定が進む今日の資本主義社会にあってはなおさらそうである。冷静に見れば、荒唐無稽なオカルトの思想になぜ若者が組織され、洗脳されたのかの分析が求められている。野蛮な死刑では何も教訓は生まれない。本当は、死刑に踏み切った人たち (政治家、法務官僚??)こそ、恐ろしい存在であるかもしれない。





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