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展望

科学的社会主義の展望  2021年1月~6月


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●月刊「科学的社会主義」No.273 2021年1月号
   生命こそ第一、政府は財政支援を怠るな
                              社会主義協会事務局次長  津野公男

 コロナ禍は今や人災
 2020年はコロナに明け、コロナに暮れた。
 2021年も20年暮れ以降のコロナ蔓延の第三波に襲われており、医療崩壊の危機に曝される、不安のなかで新年を迎えることになる。
 世界の感染者は6530万人超、死者は150万人強、日本では感染者は16万人超、死者は2300人強(20年12月5日現在)に上っている。日本では、20年夏のいわゆる「夜の街」対策の遅れによる若者の感染拡大が進みだしたときに、「普通の人」なら悪い予感を持つ状況が生まれていた。しかし、若者中心だから重症者は少ない、たいしたことではないというような「楽観主義的見通し」が意図的に流布された。菅首相や自民党の二階幹事長との太いパイプを持つといわれている観光業向けの「GO TOキャンペーン」が強行された。結果、人の流れの拡大が日本中に一気に感染を広げることになった。その後、感染も60歳代以上に増え始め、病院や介護施設でのクラスターも多数発生し、重傷者、死者数ともに増加しだし、事実上の医療崩壊におちいった。
 このような危機的状況にもかかわらず、「GO TOキャンペーンでコロナが広がったというエビデンスはない、三密を避けて、マスクをつけて・・・」とオウムのように繰り返してきた菅首相と加藤官房長官の責任は大である。

 コロナ禍が浮き彫りにした社会的格差
 コロナ禍は、現代の歪んだ社会の姿を浮き彫りにしている。同じ労働者であってもリモートワークで働き続けることのできる正規の労働者と、直ちに仕事を失う非正規労働者、フリーランサー、外国人労働者。あるいは感染の危険と隣り合わせにいながら低賃金・低労働条件を強いられている清掃業や介護職などのエッセンシャルワーカー。
 また、時ならぬ株高によって高額な所得を手に入れることになった富裕層、高額所得者たち。ある新聞記事によると、軽井沢に東京から逃れてきた富裕層が集合し、軽井沢は今や東京北麻布化している。一方の極では、生活保護申請が前年同月比18%増と急増している。
 まだ、自殺が急増している。とくに女性が多く、女性には非正規労鵆者が多いからだという。コロナを理由に退職した女性労働者は74万人で男性32万人の2倍になっている。医療や介護、飲食、接待など、女性が多く雇用されている業種がコロナ禍の最も大きな影響を受けているからでもある。この危機の時代にも、あるいは危機の時代だからこそというべきか、格差はさらに拡大しているのである。
 当たり前の話であるが、大震災やパンデミックなどの自然災害(本当は自然破壊も原因であるが)には階級性があるわけではないので、何も低所得者や不安定雇用者、弱者をねらい撃ちするわけではない。しかし、そのもたらせる被害は、明白に低所得者、弱者に集中している。
 医療体制がここまで逼迫し始めたのも、新自由主義的改革によって医療費を削り、病院や保健所の統廃合を進めてきた結果である。コロナ禍は新自由主義のもたらせた厄災を浮き彫りにしている。

 命と生活を守るための財政出動を躊躇してはならない
 国と地方合わせてGDPの200%超の日本の累積財政赤字は世界ワースト1位として、一貫して問題とされてきた。世界もリーマンショック後の景気対策や反緊縮運動の高まりのなかで国家財政の赤字は膨らんできていた。そしていまのコロナ危機によって一挙に財政赤字は拡大している。IMFの試算では、日本の財政収支赤字は19年が2.5%、20年は7.3%、アメリカはそれぞれ5.5%、15.4%、ユーロ圏0.7%、7.5%となっており、先進国の政府債務残高も122%に上昇する。
 いまやコロナ禍のもとでは、財政赤字も仕方ないというのが世界の常識となっている。日本も乏しいながらもコロナ対策の財政出動をしている。財界、自民党、財務官僚がこれまでなら容認しなかったであろう。所得制限がなく、子どもも含めた全国民に一律10万円直接支給というベーシックインカム的手法も採用された。今までの財政規律重視派なら反対していたようなこのような手法の採用は、アメリカなど諸外国も採用しているということもあるが、コロナ危機の深さに支配層が(その一部かも知れないが)統治の危機を感じ取っているからだと見ることができる。
 これに悪乗りした竹中平蔵の、一人当たり7万円を配り、そのかわりに生活保護や年金は削れというペーシックインカム論は、フリードマンなどの新自由主義者の小さな政府論の流れに沿ったもので、当然、それはベーシックインカムでないという反論もなされている。また、北欧諸国の場合には医療費や教育費は基本的に無料で、つまり現金支給ではなく現物支給(ベーシックサービスという言い方もあるようだが)が手厚いことは頭に入れておかなければならない。
 政府の新型インフルエンザ・基本的対処方針等諮問委員会のメンバーでもある小林慶一郎(東京財団政策研究所研究主幹)氏は、一度ぽっきりの10万円では不十分ですべての希望者に毎月10万円を支給のベーシックインカムが必要、生活を再建できたときに所得税に上乗せして課税し回収する(最近は低所得者への五万円給付、ただ所得調査をしていると間に合わないので希望者には全員支給し、事後的に所得税で・・・と言っている)という提案をしている。
 政府は、被雇用者には雇用調整助成金等での雇用継続、休業・失業で生活資金に悩んでいるもの資金援助(事業者に対する支援は割愛)等を行ってきたが、コロナ禍が終息するまで継続、あるいは拡充、さらにペーシックインカム手法の採用など、国民の命と生活を守るための財政支出の拡大に躊躇があってはならない。

 緊縮財政に反対の金融理論の高まり
 いま、主流派の主張、これまでの常識的な財政・金融論にたいして、公然と反旗を翻す理論が高まってきた。
 松尾匡氏は「そろそろ左派は経済を語ろう」というよびかけをおこなった。そのなかでは憲法や平和問題、民主主義的問題では実は野党側が勝っているか拮抗している、しかし年齢が下がるごとに自民党の支持が高まるのは、政府や自民党が雇用や子育て支援などでやっている感をつくりだすことに成功しているからだ。野党側も、もっと経済政策を強めて行かなければならいのではないかと言われている。積極的な(反緊縮の)財政政策によって、子育て関連、教育関連支出を拡大する政策を提起することが喫緊の課題だということである。そしてそのための赤字国債発行を躊躇してはならない。インフレの拡大(2%ぐらい)の動きが出れば政策を切り替えればよいという(以上、骨子の紹介、経済成長等の理論的部分は割愛)。松尾氏の主張を大きく取り入れたのが、れいわ新選組であり、赤バラ運動である。
 アメリカでは、ケルトン氏などによるMMT(理論)が、似た主張をしている。赤字国債発行を恐れず、雇用や医療費、福祉、教育に多くの財政を投入せよという主張で、民主党の左派的部分、オカシオ・コルテス氏などが支持している。国債を発行してもそれが国内で消化できれば問題はない。あの日本を見よと。さらに関連しては、国家は通貨発行権を握っていることや中央銀行との関連などの議論もある。
 私たちが理解してきた理論では理解できないという読者も多いと思われるかも知れないが、「ヘリコプターマネー論」をも含めてこれらの積極的な赤字国債発行理論に対する反論としては、ハイパーインフレの危険があり、彼らはインフレが高まれば緊縮、あるいは利上げに切り替えるというが、そううまくはいかないよというものが多数である。
 このような理論が高まっている背景には、現在の資本主義経済が、雇用危機や格差と貧困の拡大の傾向にたいして国家財政投入を避けられないところに陥っていること、デフレ状態が先進資本主義国では続いていることがあり、いうまでもなく金本位制からの離脱にともない、金保有に縛られずに通貨発行できるところにある。ハイパーインフレという点では、1970年代にアメリカの金本位制からの離脱によって膨れ上がったドルが世界中にばらまかれた結果ハイパーインフレが世界を襲った記憶がある。ただ、これらの金融理論をめぐる論争は別として、今は財政赤字を恐れる時期ではない。

 資本と政府は成長がお好き?
 菅内閣はともかく、経済回復を急いでいる。追加予算では脱炭素社会の実現のために2兆円、デジタル化推進のために1兆円が目玉のようだ。SDGsは今や企業を駆り立てるスローガンである。地球の温暖化に歯止めをかける脱炭素社会は、企業の戦略的課題となっている。地球環境を守る運動が企業の利潤拡大の戦略として取り込まれている。これに関しては、斎藤幸平氏らによる、SDGsはグリーン・ケインズ主義であり、これ以上の成長は地球資源を破壊するものであるとの批判もある。
 斎藤氏らとは理論的組み立てに違いがあると思われるが、これまでもたびたび取り上げてきたように、浜矩子氏や水野和夫氏らはもはや高成長は不可能だ、今ある(生み出される)所得の社会的再配分こそ課題であると言ってきた。
 成長戦略に踊らされることとなく、所得税や法人税の見直しによる社会的再配分の強化によって、「公助」を拡大する戦略への転換を求めていかなければならない。
  (つの きみお)






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