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展望

科学的社会主義の展望  2019年7月~12月


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●月刊「科学的社会主義」No.260 2019年12月号
   中東にみられる大きく塗り替えられる世界
                              社会主義協会事務局次長  津野公男

 火中に栗を拾う自衛隊の中東派遣
 自衛隊の中東派遣の準備が着々と進められている。
 政府は、トランプ大統領が要請している「有志連合」への参加を見送る見返りに武器使用をともなわない「調査・研究」名目での自衛隊派遣を決めている。派遣地域は、主としてペルシャ湾の入り囗であるオマーン湾であるとされている。
 防衛省の目論見は、「調査・研究」名目の派遣は活動範囲が制約されないからだと言われている。ただ、武器使用の権限がなくとも、有事とみなせば閣議決定して海上警備活動に切り替えることが可能である。これまでにも湾岸戦争(1991年)、アフガン後方支援(2001年)、イラク派遣(2004年)と、アメリカに協調してこの地域に自衛隊が派遣されている。そして2009年からは、ソマリア沖、アデン湾における海賊対処を名目に、海上警備活動(武器使用が認めらる)として護衛艦(2隻)や哨戒機が派遣されており、ジブチ共和国には恒久的な施設としての自衛隊拠点(基地)もあり、兵站・修理機能も備え400人の隊員が駐留している。今この地域に拠点を構えているのは宗主国であるフランスやアメリカ、最近では中国が拠点を維持している。もちろん海賊対策は口実で、中国の「一帯一路」構想にもとづく海洋進出を牽制するものだという見方も当然出て来る。それだけこの地域には大国間の利害、政治的影響力を巡っての思惑が渦巻いている。日本がアメリカの外交政策に追随しない、まさに自主的外交政策を展開しているのが中東地域である。石油資源確保のためとはいえ、日本はイスラエルとともにパレスティナ、そしてサウジとともにイラン等対立する諸国、諸勢力との親密な外交関係を持ってきた。いまや火薬庫のようになっている、先の見えない混乱の中東に、今回の派遣が認められることになれば自ら火中に栗を拾う愚行となろう。

 中東は世界の火薬庫
 今日の中東の大混乱の背景を知るには、少なくとも第一次大戦とその際のイギリスの二枚舌ならぬ三枚舌外交、その後の戦後処理あたりまで遡らなければならないことは周知のとおりである。フサイン=マクマホン協定、サイクス=ピコ協定、バルフォア宣言等においてイラク、イラン、シリア等は居住民族や自然要因を無視して引かれた国境によって生まれ、イスラエルの建国も強行された。この地域は世界最大の石油産出地域であるため、欧米帝国主義国の支配の維持は死活的に重要であった。第二次大戦後、この地域に支配力を行使していたイギリスの覇権がおとろえると、アメリカが後を襲うことになった。以降、冷戦体制下でのアメリカ、ソ連の支配をめぐる抗争、スンニ派とシーア派の宗教的対立、イスラエルとアラブの対立、そして帝国主義的支配に対する闘い等「紛争」と民衆の蜂起が様々な形をとって繰り返されてきた。最近は、結局は民主化を成功させることはできなかったが、若者を中心とする「アラブの春」の闘いがあり、さらに続いてイスラム原理派の一部によるISの軍事的蜂起があった。
 そして、現在の混乱の直接の背景は、トランプ大統領によるイランとの核合意の破棄と経済制裁強化、シオニズムにもとづく拡張主義的行為の多いイスラエル現政権への肩入れの強化に端を発している。また、イランとサウジ、ソマリアでのイランの支援を受けたフーシ派とサウジの代理戦争の激化もこの地域の不安定さをもたらせている。自衛隊の海外派遣は、これまで進めてきた海賊対処にくわえて、イランやイランがらみの勢力を想定した海上輸送路に対する攻撃に備える「有志連合」結成を提唱した、アメリカのメンツを立てたものである。
 そして新たな問題として、IS掃討作戦で大きな役割を果たしたクルド人をめぐる問題が生起している。クルド人はIS掃討作戦においてアメリカに協力し重要な役割(=空爆などはアメリカ、地上戦はクルド人)を果たしてきたが、アメリカのシリアからの撤退にともない後ろ盾を失うこととなり、トルコから攻撃を受け居住地域からの避難がつづいている。クルド人は、先述した恣意的なアラブ分割のさい、トルコ北部、イラク北部、シリア北東部、イラン西部に分割された地域に居住しており、国家を持だない世界最大の民族(2500~3000万人といわれる)として放置された。利用できるだけ利用しておき、用が済めば投げ捨てるかのようなトランプ大統領のやり方によって、この地域のアメリカに対する信頼は地に落ちている。もっとも、トランプ大統領とアメリカ軍部や国防省の考えが一緒とは限らず、撤退は限定的なものになっているが、いつでもアメリカは見捨てるとの見方が周辺に広がる心理的影響は大きい。アメリカのこのような戦略変更は、シェールオイルが発掘され、アメリカにとっては中東地域がかつてほど重要な地域ではなくなったこともあるが、経済的地位の相対的低下により軍事的覇権を維持するためのコスト負担を苦痛に感じていること、そしてトランプの来年の大統領選挙を意識した戦略なき場当たり政策が合成されたものと言えよう。そしてアメリカの後退を受けてロシアの巻き返し、経済の成長に合わせて軍事力増強を図り、一帯一路構想を進める中国の動き等世界の強国の様々な思惑が交差する。
 体制間対立から、ポスト冷戦=グローバリズムの進展による発展途上国の成長と先進資本主義諸国の経済的政治的地位の相対的低下、何よりもアメリカの地位の低下と一国主義政策、これまで私たちが見なれていた景色とは異なった景色が生まれている。

 日本共産党の綱領変更
 日本共産党中央委員会(11月4~5日開催)は、第28回党大会に提案する、綱領の一部改定案等を採択した。
 日本共産党によれば(しんぶん『赤旗』11月6日)、今回の改定案の意義は、「第一に世界史の大局的なながれをつかむことが、日本のだたかいを確信を持って進めるうえで不可欠だということです。第二に、日本のたたかいと、世界のたたかいは『グローバル化』のもとで直接結びついていることです。第三に、一部改定案が中国の国際政治における問題点を事実と道理にそくして踏み込んで明らかにしたうえで、『社会主義をめざす真剣な探求が開始』された国と判断する根拠がもはやなくなったとの改定の意義です。第四に、一部改訂案が『発達した資本主義国における社会変革は、社会主義・共産主義への大道である』という命題を押し出したことの意味です。」とされている。第四の「発達した資本主義国における社会変革…」についても関心の向くところであるが、本稿の関連ではグローバリズムや中国に関する見方についてもう少し詳しく見ることにする。
 重要だと思われる大きな変更は、現綱領の第八節の「資本主義が世界を支配する唯一の体制とされた時代は、1917年ロシアで起こった10月社会主義革命を画期として、過去のものとなった。第二次世界大戦後には、アジア、東ヨーロッパ、ラテンアメリカの一連の国々が、資本主義からの離脱の道に踏み出した」というくだりと、「今日、重要なことは資本主義から離脱したいくつかの国々で、政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも、『市場社会主義を通じて社会主義へ』という取り組みなど、社会主義をめざす新しい探求が開始され、人口が13億を超える大きな地域での発展として、21世紀の世界史の重要な流れの一つになろうとしている」という部分の削除である。そして、補強・補正として、「いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている。アメリカと他の台頭する大国との派遣争いが激化し、世界と地域に新たな緊張をつくりだしていることは、重大である。」とされている。志位委員長の提案報告によると、(前回の)2004年改定時には合理的な根拠のあった規定であったが、今日の中国に照らして現実に合わなくなっているからだとしている。さらにより具体的な中国の国際政治における問題点として、第一に核兵器問題での変質、第二に東シナ海と南シナ海での覇権的主義的行動、第三に国際会議の民主的運営を踏みにじる横暴な振る舞い、第四に人権問題(香港問題やウィグル人やムスリム系住民に対する中国の行為を批判)が挙げられている。なお、党としての正式な見解が改定案のように定まったとしても、共産党系と目される学者の中にも、大西広氏などのように中国の市場社会主義を高く評価し、その発展方向に期待する人たちもいる。当然、本誌読者のなかにも今回の改定案の分析に対する賛否は存在するはずである。しかし、いずれにしても大きく変わりつつある世界情勢をめぐって、まさしく真摯な探求と理論的な相互討論が私たちには求められている。
 また、中国に関する評価の変更とも連動する問題であるが、ベトナムやキューバに関する評価が行われていて、ベトナムについてはこれまで通り前向きな評価がなされているが、キューバに関しては大きな変更が見られる。「ベネズエーラ問題で、民主主義と人権を破壊し独裁を強めるマドゥロ体制を支え、ラテンアメリカに分断を持ち込む役割を果たしていることを深く憂慮している」との評価がされているが、これには異論をはさまざるを得ない。現在のベネズエーラ政権は貧困層の支持を基礎にして選挙を通じて打ち立てられている。貧困層の利益を優先する政権に不満を持つ勢力は、政権の基盤が強化されない間に、政権を打倒そうとしている。もともと脆弱な経済基盤、万年インフレの土壌のうえで苦戦が予想された政権である。また、当然アメリカやアメリカの意向を受けた隣国からの介入もあるし、クーデターの可能性さえある。この政権をキューバが支援することはむしろ高く評価されるべきものではないだろうか。   (つの きみお)


●月刊「科学的社会主義」No.259 2019年11月号
   全ての人の幸せをどう担保するか
                              社会主義協会事務局長  福田実

 1、「政治とは、人々の幸せをどう担保するかだ」
 「自助と共助と言うものを強調するような政治は変えなきゃならない。政治とは(略)、国として人々の幸せをどう担保するかだ」
 これは、「れいわ新選組」の山本太郎氏の対談中の言葉である。(朝日新聞、19年9月28日)
 先の参院選での山本太郎氏の政策は普遍主義的なもの、訴えは貧困層が対象と、感じる。氏が訴えた貧困層=アンダークラスの実態はどうなのか? 橋本健二早稲田大学教授の『新・日本の階級社会』から引用する。なお、氏の言うアンダークラスとは、非正規労働者929万人(2012年現在。パート主婦除く)で当時の全労働者の15%を占める。
 「アンダークラスは次のような現状にある。
 収入は極めて低く、貧困率は38.7%、女性に限れば48.5%にも達している。彼ら・彼女らは、安定した家族が形成・維持できない状態にある。男性の有配偶率はわずか25.7%で、66.4%が結婚の経験を持たない。女性では離死別者が多く、これら離死別者の貧困率はさらにきわだつ工咼い(略)。
 職場では主に単純労働に従事しており、昇進の見通しはなく、退職金を受け取ることも、福利厚生の恩恵も受けることもない。健康状態もよくない。特に精神的な健康状態に問題があり、うつ病その他の心の病気をかかえる人が多く、そうでなくても抑うつ傾向を示す人が多い。ソーシャルーキャピタル(*友達など)にも恵まれないから、生活上の問題解決の道も隕られる。(略)正規労働者のなかにも、少ないとはいえ貧困層がいる。これらの人々は、アンダークラスとさほど変わらない窮状(略)しかも、アンダークラスは、急速に増え続けている」。(*は筆者が挿入、以下、同じ))
 非正規労働者は安倍政権の下で増え続け、18年平均で2120万人である。

 2、数字から貧困の実態を想像できる?
 「安倍政権は13~15年に生活扶助670億円(世帯当たり▲6.5%)削減中です。さらに期末一時金(70億円)、住宅扶助(190億円)、冬季加算(30億円)の削減も行っています(*累計平均▲7.3%、最大▲10%)」「北海道の母子家庭の実態が紹介されています。『パート勤めで、10歳の娘とアパートで二人暮らしです。暖房器具は6畳2間とキッチンに石油ストーブが一つだけです。温度を最低に設定して節約しています。プロパンガスも高いので夏冬とも娘と一緒にシャワーです。寒くても我慢するしかなく、早く布団に入りようにしています』」(『データブック2016』)。
 さらに、2018年10〇月から3年かけて、生活保護費(対象約163万6千世帯・209万人。19年3月時点)を平均▲1.8%(最大▲5%)を実施中である。
 次に、貧困を示す数字を幾つか示す。多くは厚労省が17年6月に公表した「国民生活基礎調査」を元に『東洋経済』(18・5・30、執筆は経済ジャーナリストの岩崎博充さん)が挙げた数字である。
 まず相対的貧困率(可処分所得の中央値の半分未満しかない人の割合)。2015年の中央値は年間245万円だから貧困線は122万円余(月額約10万円)となる。日本の相対的貧困率(以下、貧困率)は15.6%で6.4人に一人。17歳以下の「子どもの貧困率」は13.9%で7人に一人。ひとり親世帯貧困率は50.8%で、OECD加盟国35力国中ワースト1位。なお、可処分所得とは、収入から税金や社会保障費などを引いた実際に使えるお金である。
 貧困率を決める可処分所得の中央値は、20年前の1997年には297万円、2015年には245万円。この20年の間に可処分所得の中央値が52万円も下がった。(*122万超~148万未満の収入層が貧困層から除外された形になる)。「生活が苦しい」と答えた大は全体で56.5%だが母子世帯では82.7%である。
 65歳以上の「高齢者のいる世帯」の貧困率は27.0%。つまり高齢者世帯の4世帯に1世帯以上が貧困世帯。さらに65歳以上の単身世帯の貧困率は、男性36.4%、女性56.2%。無職の高齢単身世帯の実収入の平均は月額で12万2千円、年換算で147万円、等々の数字を拾える。
 貧困層の拡大は、低賃金である。東京新聞(19年8月29日)は一面トップでこう報道した。「2018年時点での日本人の一時間当たりの賃金は1997年に比べ8.2%減少。これに対し、英国92%増、米国81%増、フランスでは68%増、ドイツでは59%増で『日本だけ賃金が低下』です。賃金の安い非正規雇用の比率は1997年の23.2%から、2018年は37.8%に上昇した。賃金低迷は年金支給にも悪影響を与える。これらは政府の規制緩和による非正規社員増加、企業の賃金抑制による(*趣旨)」と。
 この記事では韓国167%増が非掲載である(忖度?)。

 3、役員報酬32億6600万円!資産2兆7670億円!
 所得の分配と累進課税の強化を!
 フォーブス誌が発表した「日本長者番付」(2019年3月)を見る。柳井正・2兆7670億円(ファーストリテイリング)、孫正義・2兆6670億円(ソフトバンク)、滝崎
武光・2兆0670億円(キーエンス)と続く。本誌2018年5月号で紹介したが「日本の富裕層上位40位までの17年の資産総額は15兆9260億円で、下位世帯の52.5%と匹敵する」(『KOKKO』編集者、井上伸氏)という。(余談だがオックスファム177年1月報告によると世界では、上位8人の資産と下位世帯50%・36億7500万人の資産が同じと言う)
 日本の「役員報酬額ランキング(18年度決算)」では、ロナルドーフィッシャー・二32億6600万円、ソフトバンクグループ(株)。金網一男・23億4300万円、新日本建設(株)。マルセロ・クラウレ・18億0200万円、ソフトバンクグループ。クリスト・ウェーバー・17億5800万円、武田薬品工業(株)。カルロスゴーン・16億5200万円、日産自動車(株)と続く。
 17年の平均年間賃金は正規労働者で493.7万円(男性548万弱、女性377万弱)だからフィッシャー氏は、1年間で正規の約660年分を稼ぐ。非正規労働者(内、1年を通じて勤務した給与所得者)は175.1万円(男性229九万余、女性151万弱)だから同氏は非正規の約1865年分を一年間で稼ぐことになる。
 高額所得層の年収は1人で稼げるものではない。多数の労働者からの搾取である。だから、労働者や前述した貧困層に配分・再配分するのは当たり前である。「巨額の富は有る。しかし、偏在している。それをただす政治が無い」のである。富の幾つかを列記する。
 国内の内部留保463兆円(+国外40兆円+保険・金融業50兆円+タックスヘイブン?兆円)。不公平な税制をただすと毎年30兆円の税収増(不公平な税制をただす会)。法人所得税を5段階の累進課税にすると毎年19兆円の増収と資本5千万円以下の中小企業は減税へ(菅隆徳税理士試算)。もし、国内外の内部留保503兆円に3%課税(15兆円)しても30年は継続できる計算になるし、国内内部留保は、18年度は約17円増だから取り崩す必要もないかもしれない。タックスヘイブン(租税回避地)に逃げ込んだお金は闇の中で、かつ加速増だが、合田寛氏は「少なくても5兆円超の税収はできる」という。「5兆円」は医療機関窓口での患者負担(入院・外来)をゼロにできる額である。
 『共産党宣言』では「強度の累進課税」「相続権の廃止」を言う。この基本的な考えを現状に合わせて大衆のものにしたいものである。

 4、全ての人々の幸せをどう担保する?
 基本的には、累進性強化・生存権保障の税制実現と社会保障充実である。
 山本太郎氏の言を再び引用する。「(消費税廃止に代わる)財源として二つ挙げる。ひとつは税制改革、もう一つは国債発行。税制改革は累進性を強化し、大企業を特別扱いしない。所得税の最高税率を上げる」「これまでの消費増税分は結局どこに行ったのか。かなりの額が所得税・法人税の減税分の穴埋め。つまりお金持ち優遇に使われた。だからお金がある所からとる」「私か一番リーチしたいのは投票を捨てた人たち。そこが最大の票田ですから。その人たちに『もう一度かけてみないか』と」「世の中が大きく変わるのは、今まで投票に行かなかった人が投票するとき(*趣旨)」。
 宇都宮健児弁護士も言う。「(税制や財政は)全ての人に人間らしい生活を保障するためにどれだけの税収が必要か、どのような税制が必要かを考えること」「貧困と格差の拡大の中で、税と社会保障による所得再配分機能を強化する必要がある」と。
 三木義一青山学院大学学長・弁護士は『日本の税金』(岩波新書)で言う。「いまの基礎控除額で人間が生活できるだろうか?基礎控除は憲法25条で保障されている生存権の反映である。生存権は(生活保護等だけでなく)、一生懸命働いて健康で文化的な最低限度の生活が可能な所得を得た場合に、それには課税されない、と言う権利も保障している。この権利を具体化したのが、所得税法の基礎控除であり、すべての納税者に保障される。これが本来の意味での課税最低限である。1965年当時はこの基礎控除は13万円で生活扶助額より高額だった(*趣旨)」と。
 山本太郎氏の参院選直前ビラでは「生活保護基準を引き上げます。年収200万以下世帯をゼロに」と、謳った。     (ふくだ みのる)


●月刊「科学的社会主義」No.258 2019年10月号
   食料自給率37%、過去最低に想う
                                社会主義協会代表  河村洋二

 さがり続ける食料自給率
 農水省は8月6日、食料自給率(㌍)が37%で過去最低となったことを明らかにした。新聞各紙の報道では、この数字は記録を取り始めた1960年以降、最低だそうである。ちなみに1960年度の食料自給率は79%であった。原因として「天候不順と農畜産物の生産が伸びていないこと」をあげている。しかし事実は、昨年から今年にかけてTPP11(環太平洋経済連携協定)や日欧EPA(日本EU経済連携協定)が発効し、牛肉、豚肉、チーズ、ワインなどの輸入が急増したからである。この分では日米TAG協定(日米物品貿易協定・日米FTA)が発行すれば自給率はさらに低下するだろう。
 1960年以降下がり続ける食料自給率は国民のいのちと健康を犠牲にし、食料安全保障をないがしろにするもので、政府の責任は重大である。「責任者出てこい」と国民の怒りの声が吹き上げてもおかしくない。がしかし、われわれ労働者、労働組合はもとより農業団体からの声も批判も極めて小さい。だけでなく2025年度自給率45%達成の目標を掲げる政府でさえも自給率の低下に謝罪も責任もとらない。これでは自給率目標などあってもなくても同じである。農業団体は、自給率の低下傾向について自由化推進と農家の高齢化、後継者不足、農地荒廃、集落崩壊など農業生産基盤の弱体化を指摘している。
 農産物輸入自由化の拡大が日本農業衰退の大きな要因となっているということである。食料自給率が最低最悪となった現在、まさに農産物の自由化反対に向けた国民的な対抗策の再構築が求められている。

 いのちと健康を奪う自給率の低下
 食料自給率の低下は輸入農産物の拡大につながる。食料自給率(カロリー計算)というのは、国内全国民消費カロリーに対する国内農業総生産カロリーである。自給率37%ということは国内全消費カロリーを100とすれば、国内総生産カロリーが37%しかないということである。したがって足りない分63%(100%-37%)は外国から買っているということである。国民の胃袋の6割は外国に握られている。その額や6.4兆円、その量は国内総生産量に匹敵する。主な輸入先は米、中、豪、ブラジル、メキシコである。中国以外は地球の裏側の国である。これらの国は生産においても輸出(ポストハーベスト=収穫後農薬散布)においても農薬漬け、抗菌剤漬け、そして遺伝子組み換え農産物栽培などが自由な国である。すなわち安全よりもビジネス優先の国であるといっても過言でない。輸入農産物は農薬漬けで日本にやってくるのである。
 こうした事実から様々な疑問が沸き起こる。例えば健康や生命の問題でいえば、すべての国で多用されている農薬ラウンドアップは発がん性や催奇性があるといわれ、ネオニコチノイド系農薬は植物の交配に欠かせないミツバチを減少させているといわれている。また遺伝子組み換え農作物が人体や自然にどのような影響を与えるかも充分な検証も証明もされていない。すなわち安全安心とは言えないということである。例えば輸入レモンにはペトちゃんドクちゃんでよく知られた枯葉剤「2。4-D」が塗布されている。輸入小麦(農薬漬け)と日本産小麦を並べて少し離れたところからコクゾウムシを放すとコクゾウムシは全部日本産小麦に集まるという。
 そんなものを毎日飲んだり食べたりする人間はやばくないのかと思うのが普通であろう。現にやばい兆候として国際ジャーナリスト堤未果氏は、「アメリカでは12人に1人が何らかのアレルギーがあり、3人に1人が肥満児で、6人に1人が学習障害、20人に1人が発作性疾患、68人に1人が自閉症。アメリカの食べ物アレルギー人口は1500万人、うち半分の600万人が18才以下の子供だという。この傾向はヨーロッパにも広がっており食べ物アレルギー反応で救急治療室に運ばれる子供の数が過去10年で7倍に急増。日本でも2005年には3人に1人だったアレルギー人口が2011年には2人に1人に増えている」(「日本が売られる」)と告発している。
 アトピー性皮膚炎や食べ物アレルギーが輸入農産物や遺伝子組み換え食品、食品添加物、農薬の急増とともに拡大してきたことは日本ではよく知られていることである。このように自給率の低下=輸入農産物の増大=私たちの健康やいのちがむしばまれ、子供たちが犠牲になってきた。私たちは、子供のいのちや健康を犠牲にしてまで農産物の輸入自由化を進める必要があるのだろうか。

 国を乗っ取る食料戦略
 食料自給率が低下し続けている。60年前は自給率79%であったが、2018年現在37%に低下した。60年間で42%低下したことになる。なお、人間が食べられる穀物自給率に至っては27%でしかない。食料安全保障が危惧される所以である。安倍首相は安保といえばミサイルや武器購入と思っているようだが、「日本を殺すにやミサイルいらぬ。食糧封鎖をすればいい」という事態にあることを知らねばならない。
 かつてイギリスは現在の日本と同じように食料自給率を軽視した時期があった。しかし第二次世界大戦でヒトラーに食糧封鎖を仕掛けられロンドンで餓死者を出すなど塗炭の苦しみにあった。それに懲りたイギリスは、大戦後食料自給率の向上に全力を挙げ現在65%まで回復させている。なお主な先進国の食料自給率は、加264%、豪223%、米130%、仏127%、独95%、英65%、伊60%などである。日本の自給率37%。何と貧弱なことだろう。私たちは、食料主権の確立と食料自給率の向上を目指さねばならない。なぜならアメリカや一部グローバル企業は「食料を支配するものが、国を制する」との訓えのもとに食料を武器として食料支配戦略を立てているからである。
 アメリカは1952二年、食料不足の日本に対して余った「トウモロコシと脱脂粉乳」を無償援助し学校給食を開始した。それがきっかけとなって日本にパン食が定着したといわれている。以来コメ食は減り続け、コメ余りを産み、現在コメ離れが進行している。一方パン食の素の小麦は自給率12%に低迷し、アメリカから大量に輸入している。一方、巨大穀物商社モンサント(バイエル社が買収)は遺伝子組み換え・除草剤耐性農作物を開発したり、種子を加工して発芽しないようにし、農作物の独占支配、種子独占網を確立しようとしている。種子を通じての食料支配である。2018年の種子法、種苗法の廃止はそれを容易にするものであった。私たちはこうした食料戦略や企業戦略による食料支配を許さないために食料自給率の向上を目指していかねばならないのである。

 ストップ飢餓輸出
FAO(国連農業食料機関)の示すところでは、世界の年間食料生産は約23億トン。増加傾向にはあるが人口増や飢餓人口8億人の存在、異常気象の多発、発展途上国の肉消費量の拡大などで需要と供給は拮抗し食料の余裕はないという。農産物は通常の10%前後の増減産によって価格は暴落、暴騰を繰り返す。このことは先進国や農産物輸入国の輸入量が増えれば増えるほど農産物価格が上がることを意味している。それはほんとうに食料を必要としている国や人々(飢餓、難民)の食料を手にいれる(買う)機会を奪うことでもある。これは飢餓を拡大し、長引かせるという意味で飢餓輸出といわれている。私たちは飢餓輸出の構造に思いを巡らし、人道上の見地からも飢餓輸出をストップさせる努力をしていかねばならない。そのためにもすべての国が食料自給率の向上に全力を上げることが求められている。

 広げよう日本型食生活
 食料自給率は、私たち一人一人の心掛けによって大いに前進するところもある。その第一は地産地消、国産国消を徹底することである。生まれた土地や住み慣れた土地で採れたものが人間の心や身体、健康にいいということが、「身土不二」運動やスローフード運動の広範な定着によって広く認識されることとなった。その日本版が地産地消運動である。全国で6千ヵ所といわれる直売所を拠点に大きく広かっている。この運動をもっと広げようということである。第二は学校給食に地元の農産物を活用させることである。米飯給食によってパン食からコメ食への変化が起こるかもしれない。子供たちの食育、農業への理解、農家との交流が、未来農業につながる可能性があり重要な取り組みである。第三は日本型食生活を広げようということである。いまや世界遺産となった日本型食生活は世界で最もバランスの取れた食事といわれている。その基本は「マゴワヤサシイ」にたとえられる食材(農産物)の利用である。「マ」は豆類(良質のたんぱく質)、「ゴ」はゴマ(良質の脂肪)、「ワ」はワカメ、海藻類(豊富なミネラル、ビタミン類)、「ヤ」は野菜(ビタミン類)、「サ」は魚類、「シ」は椎茸・キノコ類(肉の消費に必要)、「イ」はイモ類(快便)のことである。これらの食材と米、麦、肉、茶などをバランスよく組み合わせたのが日本型食生活である。これらの食材はすべて地域で、国産で賄うことができる。すなわち日本型食生活を広げることは自給率の向上に直結しているのである。パンとステーキ、焼肉、ハム、ハンバーグ、クリームと日本人の食事が洋風化するとともに肥満や成人病が増えている。日本型食生活をとりもどし、健康と食料自給率の向上を図りたいものである。   (かわむら ようじ)


●月刊「科学的社会主義」No.257 2019年9月号
   参院選 野党共闘踏ん張る。次の準備を
                            社会主義協会事務局長   福田実

 1、改憲派議席3分の2を阻止
 7月21日投開票の参院選において、市民と野党の共闘は「改憲阻止の議席確保」に成功した。改憲発議には改憲勢力(自公維など)は、全議席(245議席)の3分の2(164議席)が必要だが、今回の選挙結果で改選・非改選合わせて160議席に止まった。4議席不足である。「市民と野党の共闘」で汗をかいた多くの方々に敬意を表したい。
 自民党は単独では121議席で、参議院の過半数123を確保できなかった。公明党28議席を加えなければ過半数にならない。公明党の発言力が今より増すことは確実である。そもそも公明党が賛成しないと、改憲勢力は衆議院でも3分の2に届かない。この公明党は環境権などの加憲であり、九条改憲には反対する議員、支援者(65%)が多い。
 さらに、自民党の絶対得票率(全有権者に対する得票率)は選挙区で18.9%、比例区で16.7%であり、第二次安倍政権以降で最低だった。自民党の比例区の得票数は1771万票、3年前の2011万票から240万票も減らした。
 しかし、立憲野党も減らした。16年参院選比例との比較では、共産は153万票の減、社民は49万票の減である。立憲民主は17年の衆院選と比較すると317万票の減、同じく国民民主は当時の希望の党と比較すると620万票の減である。ちなみに、公明は16年参院比で104万票の減少、維新は25万票減である。
 勢いを欠く与党が勝利したのは、低投票率と野党の力不足、そして野党統一候補の出遅れである。統一候補がほぼ固まったのは告示の1ヵ月前であった。また複数区の相互協力ができなかったことである。
 しかし、課題はあるものの今選挙の「護憲派の踏ん張り」は、「市民と野党の共闘」が大きな役割を果たした。それは31の一人区での野党共闘に結びつき、結果として13年の2勝29敗を、10勝22敗に前進させたことである。そして、この「市民と野党の共闘」の威力は来るべき衆院選に展望を与えるものでもある。
 今選挙で注目されたのは、山本太郎のれいわ新選組の躍進である。4月に旗揚げし、比例区で228万票、得票率で政党要件を軽く超える4.55%で2議席を獲得した。4億円超の寄付を集めたことも驚異である。SNSを駆使し、街頭では有権者と徹底的に対話を重ねる。そうした山本太郎代表らの姿勢が広く共感を呼んだと言われている。政策は左派ポピュリズムと言われた。
 日本のメディアは、ポピュリズムは「大衆迎合主義」[大衆迎合政治]と暗に批判的な訳をしているが、水島次郎千葉大教授は「人民第一主義」、進藤榮一筑波大学名誉教授は「人民主義」と捉えていることを紹介しておきたい。
 新社会党と同じように政党要件がない不利な選挙制度の中で議席を獲得した、山本太郎を中心とする「れいわ新選組」には率直に学び、N国の政党要件確保にも「反面教師」として学びたいものである。

 2、自民党の「必勝戦略」を粉砕できた?
 中野晃一上智大学教授は次の様に記す(18年11月17日の講演レジメ)。「安倍自民党の『実力』と選挙戦略」の小見出しで、「『絶対得票率』は小選挙区で4人に1人(25%弱)、比例区で「ほぼ6人に1人(16%~18%で推移)」「2012年、2014年の『(衆院選)圧勝』も実際には2009年の『惨敗』より得票数が低い」→「自民党の戦略は①立憲野党の分断 ②低投票率」である。
 また小熊英二慶應大学教授の指摘を再掲載したい(本誌18年9月号「展望」)。「安倍首相の周辺は、『日本人は右が3割、左が2割、中道が5割』と語っているという。結果は本稿の仮説とほぼ一致した数字である」「日本の有権者は約1億人。『右3割、左2割』なら、自公が3千万票、野党が2千万票となる」「そして、12年以降の国政選挙投票率は、いつも50%台だ。つまり『中道5割』の多くは棄権している。この状況だと、リベラル(2割)は必ず自公(3割)に負ける。野党が乱立すればなおさらだ」。「自公に勝ちたいなら、リベラル層の支持を維持しつつ無党派票を積み増す形しかない」「民主党が勝った09年衆院選はどうか。この時の投票率は69%で棄権が3割。民主・社民・共産は選挙区で3783万、自公は2808万。両者の比率はざっと4対3となる。リベラル(2割)に無党派層(2割)が加わり、自公(3割)に勝った形だ」。
 両者の共通点は、立憲野党が勝つためには「団結」と「無党派層の投票率アップである。今回の参院選の得票率を比例区で当てはめると、自・公は全体の25%、立憲野党は19%である。2割3分対2割である。しかし、小選挙区では自公3割、立憲野党2割になる(維新を除いた)。これがマスメディアの報道「自公勝利」「自公改選過半数」に繋がる。
 今参院選は前述した自民党の必勝戦略の一つ「野党の分断」を許さなかった。多くの市民・労働者・立憲野党の努力で、全ての1人区(32)で野党共闘が成立した。5月29日の市民連合の「要望書」に関して立憲野党4党1会派が「合意」したことも安倍改憲・安倍政治を転換したいと願う市民・労働者を激励した。
 しかし、自民党の今一つの必勝戦略「低投票率」は打破できなかった。前参院選16年の選挙区投票率は54.70%、今回の投票率は49%弱であり、16年より5.90%も下回り過去2番目の低さであった。この低投票率が「自公勝利」をもたらしたと言える。

 3、「踏ん張り」を支えた市民と野党の共闘
 選挙中の新聞報道は立憲政党を支えて闘う人々を激励するものではなかった。例えば「無党派層の比例区投票先」(朝日7月6日)では「2013年自民41%、16年35%、今回42%」「自公三年前の勢い維持、無党派層の42%比例は自民」、加えて年金問題、消費税増税問題などは「否定的な人多くても、野党へ大きくは流れず」と続いた。
 ところが選挙結果を受けた東京選挙区の朝日出口調査(7月23日)では無党派層の投票先として、自民23%(2名で)、公明4%、維新10%(自公維、計26%)。立憲24%(2名で)、国民5%、共産11%、社民2%、れいわ3%(立憲野党、計45%)の表を掲載している。
 こうした報道の中でも「市民と野党の共闘」は1人区を中心に踏ん張り、威力を発揮した。「四野党の比例票合計と比較して、野党統一候補の得票が上回った選挙区は、前回の28→29選挙区に拡大。得票率の比較では32選挙区合計で120.9%→127.4%に前進」と言う。4野党の比例得票に対する統一候補の得票割合が高かっだのは愛媛:永江孝子氏(当)22%、滋賀:嘉田由紀子氏(当)163%、秋田:寺田静氏(当)155%、山形:芳賀道也氏(当)153%、奈良:西田和美氏(落)147七%、長崎:白川鮎美氏(落)147%、新潟:打越さく良氏(当)142%と続いた。(参考、赤旗7月25日)
 秋田では自民支持層の23%、公明支持層の36%を野党候補が獲得。愛媛では、全体の2割を占める無党派層から72%の支持を得ただけでなく、自民支持層の28%、公明支持層の44%を野党候補が獲得した。(出口調査)

 4、今後の展望を切り拓くために
 17年10月の衆院選の総括(本誌17年コ12号《特集「国難突破」解散総選挙と野党共闘》)で6名の報告があったが、私自身の小選挙区の闘いの経験も含め、次の様に述べた(本誌18年1月号「展望」)。再掲載したい。
 「①自民党への信頼は大きくなく、小さいこと(前述したが自民党の絶対得票率は18%弱である)。だから、打倒できないことはない。②野党と市民の共闘を「名実共に」成功させ、「候補者の一本化」を成功させること。そのためには、各立憲野党が地力を高めながら、選挙においても、日常活動においても「共闘の実績と信頼関係」をつくり、第二自民党的な「介入」(今回は希望の党)を許さない体制をつくること。③右記により、野党が共闘すれば「勝てる」という『選択枝』を提供すれば、無党派層が投票に向かい、投票率が上がり、安倍政治に期待しない無党派層の支持を得ること(新潟では14年選挙に比較し、投票率が10%上昇し、6選挙区の内、1選挙区を除き無党派層の65%~71%が野党統一候補に入れたとの出口調査結果を紹介している。各野党支持票の足し算を上回る票が可能になる)。④客観的にある全国的な争点、地域的な争点を、自らの力で一層明確にすること。つまり、客観的にある対立点を主体的な努力で有権者に対して可視化すること、と思う」、と。
 最後に如何に多数派を形成するのか?を共に考えたい。
 一つは、橋本健二氏『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)からである。それは「新中間層・正規労働者の3の2がアンダークラスに冷たい。所得再配分によって利益を得るはアンダークラスのみであり、自分たちには利益がないと思っている(趣旨)」ことである。この層を獲得するための政策を考えなければならない。
 二つは、菅原琢氏(政治学者)の言葉である(朝日「耕論」8月2日)。「れいわが訴えかけた貧困層はかなり狭い範囲に止まっている、との印象を持っています」「相対的貧困と言う言葉の浸透が示すように日本の貧困層は印象よりはるかに多いはずです。逆にみれば自身を貧困層と認識していない貧困層の人々がかなりいるということです。自分の暮しの良しあしが政治で決まると考えている人も少ないため『政治を変えることで現状を変えよう』という動機自体を持ちにくい状況です。棄権に向かうこの層を政治に呼び戻すことが日本政治の課題です」。この克服も求められる。  (ふくだ みのる)


●月刊「科学的社会主義」No.256 2019年8月号
   消費税論議と「反緊縮」政策
                           社会主義協会代表  石河康国

 参院選挙でようやく消費税が焦点になった。安倍政権が「増税延期」をちらつかせていたころ、野党内には「無責任だ」と「財政再建」重視のような批判もあった。だが自民党が増税を公約にすると、「増税に反対」で足並みはそろった。立憲民主党も法人税増税を打ち出し、同党の比例で「廃止」を主張する候補もあらわれた。野党候補者調整が進んでも、税財政政策での対抗軸が見えなかっだのが見通しがよくなった。
 それは増税公約への反発だけでなく、「反緊縮」論が一石を投じたことも大きい。松尾匡立命館大教授らによる「薔薇マーク」運動が話題になり、昨年来「消費税廃止」を唱えて永田町では無視されていた山本太郎議員が、今は大いに注目されている。米国大統領選でサンダース派が反緊縮政策を鮮明に打ち出していることも刺戟となっている。
 それでは「反緊縮」政策とは何だろうか。「反緊縮」というとメディアはMMT(現代貨幣理論)だけにしぼりこみがちだが果たしてそうか。近代経済学の知識がないと判定をしかねる問題であるが、ここは政治論で考えてみよう。

 (一)
 振り返れば、30年代世界恐慌の危機のなかで社会主義運動への対抗上、諸矛盾の緩和と失業対策として、国の借金を前提とした財政出動が展開された。そういう政策は「連合国」サイドではケインズによって理論づけされた。第二次大戦後も、社会主義体制を外圧として財政出動で「福祉国家」政策が展開され、戦後世界資本主義の好循環にも規定されて、好況期の税収増で国債を償還しながら進展した。しかし70年代初から低成長へ転換し、ケインズ政策は効果が失せ、借金を抱える「大きな国家」が問題とされ80年代後半から新自由主義が制覇した。それは「財政均衡」=福祉切り捨て・民営化を基調とした。社会主義体制の崩壊は、資本主義への強力な対抗勢力の消失に連なり、新自由主義は世界を制覇し格差と貧困、福祉と環境破壊を惹起した。2008年以降の金融危機では「緊縮」どころか莫大な公的資金が大資本救済に投じられ、民衆だけに「緊縮」強制がなされた。「緊縮」の階級的性格が露になったことへの反撃が欧米左翼において「反緊縮」という表現を採ったのは当然であった。そして、現実の社会主義が崩壊した以上、資本主義国内の民衆の階級闘争で新自由主義の横暴を規制するために、ケインズ的な手法を現代的にバージョンアップし活かそうと試みるのも当然であった。
 ただ、金本位制の終焉など時代の変容の中で、現代の「反緊縮政策」はかつての高成長時代のケインズ政策とはちがうようだ。
 松尾匡氏の「反緊縮のマクロ経済政策諸理論とその総合」(大阪市立大学『経済学雑誌』119九巻第2号)によれば、現代の欧米の反緊縮政策とは「医療保障、教育無償化、社会保障の充実等の社会サービス拡充」と「財政の拡大で景気を刺激することで、雇用を拡大する」ものであるが、財源は「大企業や富裕層」増税によるだけではない。「公的債務の返済を絶対視することは新自由主義側の信条とみなされており、公的債務を中央銀行が買い取って帳消しにすることも提唱」するという。この辺りがかつてのケインズ政策と一味違うようだ。
 しかし「反緊縮」で単一の政策体系をなしているわけでなく、主要な潮流として「左派ケインジアン」(クルーグマン、スティグリッツなど)、「非主流派ケインジアン」(MMT論者など)、「信用創造・ヘリコプターマネー論」などがあり各潮流間で論争は盛んらしい。それでも松尾氏によれば以下のような共通点がある。①通貨発行権を持つ国家が破たんすることはない。②課税は市中の購買力を抑えてインフレを抑制する手段。財政収支の帳尻をつけることに意味はない。③不完全雇用の間は通貨発行で政府支出をまかなってもインフレ悪化はしない。④民間が貯蓄超過なら財政赤字は自然なこと。
 不勉強な者がこれ以上「解説」するのはやめよう。。関心ある方は上記松尾論文はじめ反緊縮経済学の本が山ほど出ているので勉強されたい。直近では『「反緊縮!」宣言』(亜紀書房)が手頃である。
 大事なことは、「反緊縮」の理論家は政治の場で政策を試そうとし、左派の政治家は政策をよく勉強し自らの政策に取り入れて試そうとしていることだ。コービン労働党とTUCのブレーンにはMMT派も左派ケインジアンも寄与し、これらを政策化して2017年総選挙で大躍進した。サンダースが「インフレが来ると政府とウォール街は言って民衆に緊縮を強いたが、そうはならなかった」と訴えるのも、オカシオ・コルテス議員のMMTにたつ「雇用保障プログラム」も、「国債発行はインフレを招く」という伝統的観念を問い直そうとするものだ。
 理論は政治的実践で何か民衆に受け入れられ、実際に効果を発揮し民衆の状態を改善できるかを「やってみて」検証するほかない。そこで左翼が躊躇する国では、右翼ポピュリズムが民衆の怒りを餌食にすることは、5月の欧州議会選挙に示されている。
 むろん壮大な実験だから紆余曲折がある。EUの緊縮政策強制に反旗を翻したギリシヤのツィプラス政権は妥協を強いられ、苦境に立っている。けれどもこの苦い経験を経て、ツィプフス政権の閣僚を辞任した経済学者・バルキファスが世界の反緊縮シンクタンクを提唱している。彼が失敗から何を提起するか、わが国でも近年著作が好評である。

 (二)
 さて日本では議論は少し面倒だ。その原因の一つとして、「反緊縮」=「国の借金の野放図な容認」と矮小化されアベノミクスに親和的と受け取られがちなことがあげられる。
 アベノミクスはバラマキの一方で、2回も消費増税を延期して累積債務は膨大になった。一方究極の金融緩和をしても、インフレにならない。ここだけ見て、EU諸国の緊縮政策とは違い「成功」していると評価する向きも多い。所得の再配分どころか消費増税分か法人税減税分にまわり、民営化か強行されているなどは不問に付し、メディアは欧米の「反緊縮」理論とアベノミクスの「共通項」だけを解説する。そして『朝日』のような財政再建派からは「将来世代へ負担を回すいかがわしい禁じ手」として扱われる。加えて経済雑誌は興味本位にMMTだけに焦点を当て議論の幅を狭めている。しかしMMTは反緊縮政策の論拠の一つであって、それだけ取り出して机上で当否の決着をつけようというのは、「日本的」理論家の悪弊である。これに反して、欧米の反緊縮陣営はさまざまな経済理論を、経済的・政治的条件に応じて総合して政策に活かし、民衆の反応やその効果で点検しようとする。
 私は「反緊縮」の提起を、ある意味ではラディカルに、もっとおおらかに受けとめるべきだと考える。
 この間、消費税が導入され「財政健全化」が人々の中に擦りこまれてきた。家計と国の赤字を同列にして「こんな借金を孫子の世代に負わせては申ししわけない」と思いこまされてきた。税金を下げてほしい、社会保障を拡充してほしいという声は「財源」論で常に蓋をされ、それだけでなく「福祉財源」の仮装で消費増税を強いられ、生存の困難を招いてきた。「反緊縮」の提起はこの蓋に疑問を真正面からつきつけた。
 憲法25条の生存権には「財源の範囲内」という制約はない。絶対的な権利なのである。「反緊縮」の提起はそういう根底的な問いも含んでいる。「財源云々は二の次だ」と人々が叫び政治に進出してこそ、法人増税や資産課税の検討に政治が真剣に取り組むことになる。これを極端な議論というなかれ。権力は生存権の規定に不安を抱くから、自民党の新憲法草案には「財政均衡条項」の新設が明記されているのである。これによって財源は人権を制約する。ちなみにスペインの反緊縮政党・ポデモスは、憲法の「財政均衡条項」の廃止を掲げている。
 おおらかにというのは、「左翼的」な神経過敏をこれを機に反省したいのである。「反緊縮」論には何かと「ポピュリスム」「空想的」とか「安倍と同じだ」など眉を顰める向きが多い。「日本維新」は「議員定数削減・公務員賃金切り下げ」とセットで「消費増税反対」を公約している。だからといって「消費税減税」を主張すれば彼らと同罪とはいわれないだろう。米国の大富豪ソロスは「富裕層への資産課税導入」を主張した。イタリアの右翼ポピュリスト連立政権はBIを実行し、かつて資本主義国最強といわれた共産党の末裔をけちらかした。ヒトラーは財政出動で失業救済をはかり、インフレを心配して財政均衡を墨守した社会民主党をけちらかした。極右と対決する欧州左翼はどちらが真実に「ポピュリスト」であるかを競っている。米国社会民主主義派は、排外主義による失業救済を謳うトランプに勝つのには、民主党伝来の上品な政策でなく、99%の状態を改善する大胆な政策だと奮闘している。
 「反緊縮」政策が実行されて経済が好転するという保証があるわけではない。だが少なくともその実現に精一杯努めた政治勢力に民衆の支持はあつまるだろう。民集の信頼があってはじめて、政策が思い通りに効果を得られない場合でも、資本主義のシステム自体をよりラディカルに変革するための次の構想と運動を民衆とともに作り出せるだろう。社会主義をめざす勢力が当初からその仕事を誠実に担わなければ、代わって右翼ポピュリストが「反緊縮」の仮装で権力につき、その結果世界は滅亡の危機にむかうだろう。欧米左翼にはそういう現実と向き合う真剣さがあると思う。
 日本の「理論家」は政治的実践が不足している。理屈先行でそれも研究も実践もしないうちにレッテルを張る悪癖が戦前からある。すこしはレーニンにまなぶべきである。欧米「反緊縮」派の理論と実践に注目し、日本でも消費税論議を機に謙虚に勉強し政治の場にひろげていきたいものだ。     (いしこ やすくに)


●月刊「科学的社会主義」No.255 2019年7月号
  自治体選挙の教訓を生かし参院選勝利へ
                           社会主義協会代表  河村洋二

 徳島市議会選挙でトップ当選
 3661票、春田ひろし(新社会党)が徳島市議会議員選挙で獲得した得票である。目標をはるかに超えた信じられない得票で、全く想定外のトップ当選であった。
 4月21日投開票の徳島市議会議員選挙は、定数30人、立候補40人(新人15人)、落選10人という徳島市議選史上最大の激戦といわれる中でたたかわれた。勝因は、地元後援会の組織化に成功したこと、支持者への支援要請をやりぬいたこと、そして一声運動をやり切ったことにある。
 さらに言えば、想定外の票が生まれた理由に、地元の投票率を50%(徳島市平均は41%)に引き上げた地元後援会活動による地元票、さらに、候補者の出身職場であるJA(農業協同組合)で支所集会が持たれるなど農業関係者の票が大幅にプラスされたからと思われる。こうした地元や農業関係者の絶大な支援は、候補者が、生まれた育った地元で長年JA職員として営農指導や労組活動、PTA活動、消防団員、有機農業家として地域活動を積み上げてきたからであろうと思う。「春やんおるで」、「洋っちやん頑張ってよ」と選挙事務所を訪れる地域住民や農業者を見ていて「日頃の活動のたまものとはこのことだな」と思ったからである。
 今回の選挙は4年前に春田候補が「食と水、みどりを守る徳島県民の会」(全農林、農協労連などで構成)の推薦候補に挙げられたことがきっかけで始まった。当時は同じ地元にN市議(自民)がいるということで、次は「春田で」ということで断念した。そのN市議が不幸にして死去したことで眷田ひろしは地元町内会の後押しもあって昨年の夏には立候補の決意を固めていた。徳島市の有権者は約21万5000人、過去3回の平均投票率は40%、今回の立候補者40人、候補者一人平均2150票である。つまり、当選には最低2200票は必要であった。

 文字どおりの地元候補に
 しかし、春田候補の出身労組や新社会党の組織力だけでは到底勝てないことが明らかだった。
 まず、何はともあれ、候補者の本気度を示す必要があった。そこで昨年12月にJA徳島市に退職届を出した。退路を断って本気度を内外に示すためである。
 次いで「地元の支援がぜひとも必要だ」ということで、地元の推薦を得るために全町内会長を訪問し、「農業振興、環境保全、防災、子育て支援など」をアピールし、支援、協力をお願いした。結果、町内会連合会総会で推薦決定を得ることができた。
 さらに、春田候補の所属する町内会が中心になって春田洋後援会加入をよびかけ、後援会会員の拡大を目指した。地元後援会有志や友人、家族ならではの細やかで大胆な取り組みは、大きな力となった。それらが町内全体の選挙ムードを高めた。
 これらの取り組みが、地元の議員待望論とも結びつき、春田ひろしを「当選させよう」、「投票に行こう」という大きな声となったのである。春田ひろしが文字どおり地元候補になった瞬間であった。

 地元にもっと積極的にかかわろう
 教訓としたいことは、「町内会やPTA活動、防災活動などにもっと積極的にかかわろう」ということである。
 春田候補が「春やん」「ひろっちゃん」と地元に親しまれ絶大な支持をえたのは、40年来町内会活動に団長や会長、JA職員としてかかわってきたからである。ともすれば従来の選挙では、組織選挙、労組対策が中心で、候補者の地元や町内会対策はあまり重要視してこなかった。しかし当選するためには町内会や地元対策は無視できないし無視すべきでない。選挙の時だけ地元候補を叫んでも住民の信用は生まれない。日頃の活動、関わりが大事である。これを機に日常の地域、町内会活動を見直したいものである。とりわけ新社会党の顔である議員や党役員、活動家においてはなおさらそういうことが言えるのではないだろうか。
 新社会党は少数ながら春田選挙の事務局を担い、選挙事務や地区・労組の中核となって奮闘した。春田当選で大きな展も得たが、質、量ともにまだまだ力量不足は否めず多くの弱点に気づかされた。

 各地区毎での活動充実が課題
 今後の課題は、何といっても市内各行政区毎の「地区選対の充実強化」につきる。いうまでもなく地区選対は単なる紹介者カードの点検組織ではなく、活動を通じて党強化を実現する要の組織である。すなわち地区毎に責任者(党員と労組活動家など)を複数配置し、3~4か月一緒に行動する中で信頼関係を深め党員、新社会読者の拡大に結び付けることを目的としている。
 今回の選挙では党強化のための党員拡大や新聞拡大に十分な役割を果たせなかったが、それでも党員1人と新聞3部を拡大できた。
 4年後の選挙までにここを充実・強化し、票も党員も新聞も拡大できる名実ともに党強化が追求できる地区選対にしていかねばならない。そのためには党の選挙闘争方針(戦術、戦略)を理解した党員の拡大、労組活動家、とりわけ候補者出身労組(農協労連、徳島市農協労組)での活動家づくりが求められている。

 労組と選挙闘争~政治・選挙闘争強化の必要を痛感
 この選挙で、あることを感じた。それは「労働組合が選挙闘争をたたかわない日が来るのではないか」ということである。「紹介者カードが集まらない」という事実を通じて痛感させられた。
 春田候補は連合推薦候補ということで組合が割り当てられた。だが、「個人情報保護の立場から」また「プライバシーの侵害」になるからと組合員名簿を「出さない、見せない」、「組合員宅への電話もダメ」、「職場集会にも候補者を呼んでくれない」という労組が増えていることにぶち当たった。したがって、労組選対はポスター貼りなどくらいしかすることがなかった。これでは選挙闘争とはいえないし、闘争にならない。
 労組の割り当てがあっても、有効に活用できなければ選挙に勝つことはおろか立候補も困難なる。この点に関する真剣な総括と議論が急務である。そして長期的には労組の政治、選挙闘争に関する徹底したたたかいの強化と学習会の組織化が求められている。
 1970~80年代の民青や共産党が主張した「政党支持自由論」は間違いだったとはいえ、政治闘争の重要性に対する理解を深めることができた。しかし現在の「個人情報保護論」による労働組合の政治・選挙忌避は、ますます組合員の政治離れや選挙への無関心層を拡大させることは間違いない。企業内に閉じこもり原発廃止など社会的問題に取り組まない連合労働運動が社会的存在価値を失っているように、組合員を政治、選挙に参加させない労働組合はやがて存在価値を失うだろう。そして労働組合が政治闘争、選挙闘争を闘わない日が来るのではないかと思った次第である。
 だからこそわれわれは労働組合の政治・選挙闘争の強化についてもっともっと意識して取り組まねばならない。自らの職場、地域から政治・選挙闘争を闘う体制づくりの確立を急がねばならない。

 全力で参議院選挙勝利へ
 統一自治体選挙を終え、政局は7月の参議院選挙に向かっている。最大の課題は、今回の改選と非改選を合わせ、自民党などの改憲勢力に議席の3分の2以上を確保させないこと。そして、その成否は、大きく一人選挙区での闘いにかかっている。 5月29日、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」などの努力もあり、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党、社会保障を立て直す国民連合の野党5党派が13項目の共通政策で合意した。さらに、32の改選一人区全てで、野党5党派や新社会党などによる統一候補が擁立できる見通しだ。
 共通政策は、その第一項目に「安倍政権が進めようとしている憲法『改定』とりわけ第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすこと。」とする。さらに、辺野古新基地建設の即時停止や「原発ゼ囗を目指すこと」などを掲げる。どれも、重要な闘いの課題である。
 だが同時に共通政策は、「だれもが自分らしく暮らせる明日へ」がタイトルであり、「すべての子ども、若者が、健やかに育ち、学び、働くことを可能にするための保育、教育、雇用に関する予算を飛躍的に拡充すること」や最低賃金1500円を目指すことなども掲げている。
 ぜひ、暮らしと政治を結びつける訴えも大切にし、自治体選挙の教訓を生かす各地元での粘り強い取り組みなど、参議院選挙の勝利に全力を傾けよう。     (かわむら ようじ)




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